ちょっとしたメモ

ウェブログサービスの利用規約と著作権

gooも参入してウェブログ界隈はますます賑やかになってきたが、このgoo BLOGのサービスはいささかユニークに見受けられる。利用規約に「記事及びコメントにかかる著作権(中略)は、会員が当該記事を会員ページに投稿した時点又は会員もしくは第三者がコメントを会員ページに投稿した時点をもって、(中略)当社に移転する」とうたい、著作権をgooが所有すると主張しているのだ(※注:NTT-Xはこの条項を3月11日付で修正した)。

gooブログ利用規約第10条(著作権)の第1項全文を引用してみよう。

1.本件情報のうち、記事及びコメントにかかる著作権(著作権法第27条及び第28条に規定される権利を含みます。以下同様とします)は、会員が当該記事を会員ページに投稿した時点又は会員もしくは第三者がコメントを会員ページに投稿した時点をもって、会員又は当該コメントを投稿した会員もしくは第三者から当社に移転するものとします。会員は、第三者又は当社に対して、当該記事及びコメントにかかる著作者人格権を一切行使してはならないものとします。この場合、当社は、会員に対し、何らの支払も要しないものとします。

ここでいう「本件情報」とは、第1条で“コメント、記事及び本条第7項に定めるリンク先を総称して「本件情報」といいます”と述べているもので、要するに会員や利用者の書き込む内容全部ということだ。ちなみに著作権法の27条と28条は、それぞれ「翻訳権、翻案権等」「二次的著作物の利用に関する原著作者の権利」を定めたもの。さらにユニークな第2項も引用しておこう。

2.当社は、前項に従い当社に著作権が移転した記事について、当該記事を投稿した会員に対して、当該記事を編集又は削除する権利及び第9条第6項に従いコメントを受け付ける設定を行った場合で自己の記事にコメントが投稿された場合であって、本規約第12条第1項各号のいずれかに該当するときは、当該受領コメントを削除する権利を許諾することとします。

つまり、著作権を放棄した会員は、gooの好意によって自分の記事を編集させていただけるということだ。すごいなぁ。さらに第4項。

4.第2項に定める場合を除き、会員は、本件情報を編集、複製、転載することはできません。

このウェブログに投稿してしまったら、同じアイデア文章を別の場所に記述することも、自ら編集した内容を転載することもできない、つまり著作物はgooが独占するということですな。

念のため大手のウェブログや日記、掲示板サービスをいくつか確認してみたところ、多くは「第三者の著作権を侵害しないこと」といった注意は喚起しているが、「著作権の譲渡」というのは見られない。少し踏み込んだ形としては、たとえばYahoo! Japanの利用規約は次のような内容だ。

Yahoo! JAPANには掲示板など、ユーザーのみなさまが送信(発信)したコンテンツを不特定多数のユーザーがアクセスできるサービスがあります。このような不特定多数のユーザーがアクセスできるサービスに対してユーザーがコンテンツを送信(発信)した場合、ユーザーはYahoo! JAPANに対して、当該コンテンツを日本の国内外で無償で非独占的に使用する(複製、公開、送信、頒布、譲渡、貸与、翻訳、翻案を含む)権利を許諾(サブライセンス権を含む)したものとみなします。また、ユーザーは著作者人格権を行使しないものとします。(以下略)

7.Yahoo! JAPANに送信(発信)されたコンテンツについて

一見するとgooと同様に思えるかも知れないが、「非独占的に」使用する「権利を許諾」するということで、著作権を譲渡したり放棄したりすることを求めているわけではない。著作者人格権云々も、Yahoo!によるコンテンツ使用に関する話であって、ユーザは自分で自分のコンテンツを自由に扱う権利を保有している。

Livedoorは分かりにくい構成で、サービス自身の規約以外に「LivedoorIDサービス利用規約」も適用されるとし、その第18条で“又、「livedoorIDユーザ」は、自らアップロードしたウェブ・コンテンツについての著作権を行使しないことに同意します”とうたっている。ここは前の文脈から飛躍があって理解しにくいのだが、Yahoo!と同様のことを言いたいのだろう、たぶん(著作権を「ライブドア対して」行使しない、と解釈すれば。追記:「ライブドア及びライブドアが指定する者に対し」というフレーズを追加することがlivedoor Blog 開発日誌で表明され、実施された。規約の日付は“平成16年2月1日更新”のままで、変更があったことはこの「日誌」を見ないと分からないのだけれど)。

orkutが会員のデータは自動的にorkutのものになると宣言して大きな反響を呼んでいるわけだが、ウェブログのコンテンツを丸ごと自社のものにするというのは、これに優るとも劣らぬ大胆さだ。権利譲渡を受け入れるかどうかは会員それぞれが判断することだから、(gooに限らず)利用規約は丁寧に読んだ方がいいかも知れない。

〔補記〕著作者人格権とは著作権法第18条から20条に定められた「公表権」「氏名表示権」「同一性保持権」で、同法第59条で「著作者人格権は、著作者の一身に専属し、譲渡することができない」とされている。そこで、著作権の譲渡/許諾に加えて「著作者人格権を行使しない」という文言が加わるわけだ。この記述はこうしたサービスの規約では一種のお約束で、たとえば「著作者人格権を行使しない」というキーワードで検索すると、たくさんの例(およびそれに関する意見)が出てくる。

〔追記〕NTT-Xは3月10日、この条項を数日中に削除する方針を明らかにしITmedia ライフスタイル)、3月11日付で改訂した。このメモはgooを非難することが目的なのではなく、ウェブログをはじめとするオンライン投稿内容の扱いを、利用者がきちんと自覚すべきという趣旨。Yahoo! JAPAN型の条項だって、利用者は自分の著作物を自由に扱う権利を持つが、サービス側もそのコンテンツを自由に再利用する権利を確保しているわけで(試しに「Geocites 利用規約」と検索して出てくる意見を読んでみよう)、それをどう考えるかというのも利用者の判断に委ねられている。

たぶん、goo BLOGのスタッフの人たちはいいものを作ろうと一所懸命努力していて、別の知的所有権関連セクションの指示でこういう規約になったのだと推測される(お手伝いした企業の掲示板でも同じようなケースがあり、規約を差し替えてもらった)。できれば建設的な方向で、ウェブログサービスが発展していってくれる方が、みんな嬉しいと思う。

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