いろいろ聴いていくうちに、ブリリアント・クラシックのモーツァルト・エディションはかなりいけるのではないかという気がしてきた。カタログによると全24巻170枚のCDでモーツァルトの全作品を網羅する計画で、半分以上は最新の研究成果に基づくピリオド楽器による新録音になるという(逆にいえば半分近くはライセンス音源による既存の演奏ということになるから、質のばらつきが出るのは仕方ないだろう)。没後200年の時に「大全集」がフィリップス(180CDs;720曲)とロンドン(125+2CDs;644曲)から出て以来であろうこの野心的な試みは、コンセプトとここまでの演奏の質からみて、かなり期待が持てる(ユニバーサルから出ている新版大全集は、たぶんロンドン版と当時のグラモフォン選集の40CDsと組み合わせて再編成した128CDs)。

最近購入したモーツァルト・エディションのセットは:

第2集:フィガロの結婚+アポロとヒュアキントス
クイケン指揮ラ・プティット・バンドによるフィガロは秀逸(1998-06-05ライブ録音)。アポロ~の演奏はマックス・ポンマー(Max Pommer)指揮ライプチヒ放送響によるもので、歌手のビブラートがちょっとしつこいが、これも十分聴ける(1990録音)。ポンマーは新バッハ合奏団(Neues Bachisches Collegium Musicum)による、モダン楽器ながらレベルの高い演奏で知られる(ラウタヴァーラなんていう珍しい北欧の作曲家の曲を録音していたりもするらしい)。
第5集:牧人の王+ルーチョ・シッラ
牧人の王はイェート・ヴェンツ(Jed Wentz)指揮ムジカ・アド・レーヌム(Musica ad Rhenum)によるもの。ヴェンツはブリュッヘンと同じくトラヴェルソ奏者として活躍していた指揮者、ムジカ・アド・レーヌムはMAKCABBらのメンバーが1990年に設立したピリオド系の団体のようだ。録音、演奏共に素晴らしい(2001-09録音)。ルーチョ・シッラはシルヴェイン・カンブルラン(Sylvain Cambreling)指揮、王立モネ劇場o.によるもの。1985-01-19/20のライブ録音ということだが、響きがデッドで演奏も貧しく聞こえてしまい、これはちょっといただけなかった。
第7集:ピアノ・ソナタ全集
クララ・ヴュルツ(Klára Würtz)のモダンピアノによるソロで1998年夏に録音された5枚組。素直で美しい演奏で、ハッとするような発見はないものの、安心して聴ける。各曲とも単独でマーケットに十分通用する水準。
第10集:室内楽集
7枚組のCDで、ホルン、オーボエ、クラリネットの四重奏、五重奏、ピアノのトリオ、四重奏、五重奏、フルート・ソナタなどを収録。フォルテピアノをオールト、ペンソン、ピアノをヴュルツとお馴染みの顔ぶれが受け持ち、管楽器はザイフェルト(Hr)、コッホ(Ob)、ライスター(Cl)といったスターも登場している。録音は1984から1999まで様々。
第11集:ポントの王ミトリダーテ+劇場支配人+バスティアンとバスティエンヌ
ミトリダーテはヴェンツ指揮ムジカ・アド・レーヌム(2001-08録音)で、秀演。劇場支配人はヘルムート・コッホ(Helmut Koch)指揮ベルリン室内o.(1968録音)で、古いスタイルだが、教会での響きが豊かな録音。バスティアン~はポンマー指揮ライプチヒ放送響(1989/1990録音)で、歌手のビブラートがうるさいが、珍しい曲なので楽しめる。
第13集:鍵盤楽曲作品集
先日取り上げた10枚組のCD。このエディションはいけると思うきっかけとなったセット。

今のところ5枚組が1800円、10枚組が3500円程度なので、全集170枚を順次揃えても、6万強ということになる(全集が完結してセットになると、160枚のバッハ全集の価格から推してたぶん4万台か。ちなみにフィリップス版は廉価盤になって10万程度、ユニバーサル版は20万程度)。毎度の話だが、このレベルの演奏がこの価格で提供されるというのは、競争の世界とはいえ、いやはや。

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