花火 第3回演奏会プログラムノート

ショスタコーヴィチ:交響曲第9番

文:後藤正尚(Vn)

第9交響曲。そこには、ベートーベン、マーラー、ブルックナーといった名声ある作曲家の残してきた作品のあまりの偉大さ故、いつしか一種の迷信的な語感すらつきまとうようになっていた。世の人間は無意識のうちに、「第9」という呼称に作曲家の記念碑的作品を求めていたのである。

それは、既に8つの交響曲を世に送り出し、名声を勝ち得ていた、ショスタコービッチにしろ例外ではなかった。

しかし、ショスタコービッチは、その本質においてディベルティメントにも近い、短い、この上もなく軽快な小品を交響曲「第九番」と銘打って世に投げだすことによって、世の人間にもののみごとにすっぽかしを喰らわせたのであった。

とはいえ、この曲は短い簡素な曲ではあるが、無駄のない様式的に完備した、よくかけた作品といえる。

第1楽章 アレグロ

古典的な簡潔なソナタ形式で書かれている。まず、明快な第1主題が1stVnによって歌いだされる。そして、これが発展し、ついで弦が最強音でもう一度第1主題を演奏する。突然トロンボーンが威厳ある4度音程を一吹きすると、弦打楽器の行進曲風のリズムにのって、ピッコロが陽気でおどけた第2主題を奏でる。クラリネット、ファゴットがこれに続き、曲は展開部へ入っていく。展開部は短く圧縮されているが、エネルギーに溢れており荒々しいクライマックスを形作る。その後、曲は再現部を経、最後はトランペットが第1主題のモチーフを奏でて第1楽章をしめる。

第2楽章 モデラート アダージョ

抒情的な展開部のない2部形式。室内楽的楽章である。まず各木管楽器群が、静寂の中で叙情的な独奏を歌う。すると次に、弱音器をつけた弦楽器が半音階をずれ動く起伏をみせる、後にここに木管群が加わり、高調に達した後、再びひいていく。その後、再現部を経てコーダへ。主要主題の片鱗を、フルート、ピッコロが弱奏し、弦のピッチカートを経て曲は消えていく。

第3楽章 プレスト

まず、木管群が、華やかな第1主題を奏で、その後弦の跳躍を中心とした第2主題が奏でられ、さらに第1主題が今度は弦群により奏でられる。中間部では、金管が加わって音楽を盛り上げ、トランペットが悲しげなメロディーを奏でる。その後展開部を経た後、曲は急速に力強さを失い4楽章へアタッカで続いていく。

第4楽章〜第5楽章 ラルゴ〜アレグレット

まず、トロンボーン、チューバの威厳を持ったユニゾンのフレーズで始まる。そしてファゴットの悲しげなモノローグである。ファゴットのソロはこの後5楽章へと続いていくが、このソロが、曲の流れの中での転換点としての意味は大きい。すなわち、ファゴットのソロは5楽章に入るや、たちまちユーモラスで軽快な物へと移行する。その旋律はその後1stVnに、奏でられる。その後、弦による行進曲風な叙情歌の後、曲は再現部へ移行する。ここではまず、低音楽器により冒頭主題が、クラリネットによるエピソードをはさみつつ奏でられる。その後楽器が加わっていき、曲はクライマックスを迎え、華やかな行進曲風の音楽が奏でられる。その後、曲はコーダへと移行する。ここでは、冒頭主題を弦と木管が対話しつつ、曲の力製を強めていき、淡々と曲は終結を迎える。


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©2001 by 後藤正尚.
Status: 2001-04-21演奏会にて.
Original URI is http://www.kanzaki.com/music/hanabi/pn03-ds.html