ファイルメーカーとWebブラウザの連動

ファイルメーカーで蓄積したデータベースがいくつもあるけれども、コストやメンテナンスの関係で、特定のマッキントッシュでしか利用できないということはないでしょうか? あるいは、このデータを社外にも公開して活用したいと考えることは? ファイルメーカーの能力と、Webブラウザのフットワークを組み合わせれば、いろいろ面白い応用ができるに違いありません。そして、それは驚くほど簡単に実現できるのです。

オフィス情報とデータベース

オフィスにおいてデータベースはなくてはならない存在です。ほかにオフィスの代表的な情報といえばやはりワープロの文書でしょう。これをデータベースと比べてみるとその特徴がよく分かると思います。ワープロ文書は基本的に個人が作成するもの。保存して再利用はするけれども、いったんできあがったものに手を加えることはあまりありません。一方データベースは、一人で作るというよりは多くのメンバーの情報を集積したものです。そして、これは完成ということがなく、常にデータの追加・更新を行ってメンテナンスされるのが普通です。つまり、データベースは全メンバーが簡単に閲覧・修正できるようになっていないとその価値を十分発揮できない、ネットワーク度の高い情報と言うことができます。

データベースとイントラネット

全てのコンピュータにデータベースソフトをインストールするには相当なコストがかかりますし、バージョンアップの手間も馬鹿になりません。そこで考えられるのが、イントラネットでWebブラウザからデータベースを利用する方法です。こうすれば原理的にはサーバーにデータベースを用意するだけでOK。さらにテキスト文書やグラフ類もこのブラウザで閲覧できるようにしておけば、より統合されたオフィスシステムを作るというメリットも生まれるわけです。

イントラネットにこのような機能を組み込むにはCGI(Common Gateway Interface)というプログラムを用います。CGIとはWWWサーバーとデータベースのようなアプリケーションの仲立ちをしてくれる仲介者です(図1)。マッキントッシュ上でCGIを動かすにはAppleScript(AppleEvent)を操る必要がありますが、ファイルメーカーProのようなメジャーなアプリケーションのためには、こうした面倒な部分を引き受けてくれるツールが市販されています。以前紹介したWEB FMもそのひとつですが、今回は同様の仕事をこなす「Tango for ファイルメーカー」をとりあげて、ブラウザとデータベースの連動を考えてみましょう。

Tango for ファイルメーカーを使ってみる

Tango for ファイルメーカーをインストールすると、図2のようなファイルがデスクトップに現れます。Tango.acgiはCGIの働きをするアプリケーション、Tango Editorはブラウザからデータベースを操作する手順を記述するためのツールです。

ブラウザからCGI経由でデータベースを検索する手順は図1でみたようにかなり複雑です。Tangoではこうした手続きを「クエリードキュメント」というファイルにまとめておき、Tango.acgiはこれを参照して動作するようになっています(クエリーqueryとは問い合わせという意味の英語です)。

Tango Editorを使うと、ほとんどマウスによるドラッグとクリックだけでこれらの操作をクエリードキュメントに登録することができます。基本的な内容なら、HTMLを1行も書くことなく、検索用のフォームから結果の表示までをほんの数分で作ってしまうことが可能なのです。

データソースの設定

Tango Editorでの最初の作業は、使用するファイルメーカーとデータベースファイルの指定です。これは「編集」「データソース...」メニューで行います(図3)。まずファイルメーカーの所在地を登録して、CGIがきちんとアプリケーションを起動できるようにして下さい。

次に、実際に利用するデータベースを指定します。「開く...」ボタンでファイルダイアログを開き、目的のデータのあるファイルメーカー書類を選択します。ここでTango Editorはデータベースのレイアウトやフィールドを確認し、次のフォーム作成のステップでスムーズに作業ができるよう準備をしておくのです。

フォームビルダー

先に述べたようにTangoではクエリードキュメントを使ってデータベースを操作しますが、これはTango Editorのフォームビルダーを使うことによって、とても簡単に作成できます。フォームビルダーには検索用と登録用のものがありますが、ここでは検索用のビルダーを使ってみることにしましょう。

まず「ファイル」メニューから「新規」を選び、次のダイアログで「検索フォームビルダー」を選んでください(図5)。ここでデータソースを選択するウインドウが表示されるので、先ほど登録したデータソースを選んでOKします。すると図6のような画面が現れましたね。左の「データベース」パレットには、ファイルメーカーで作成したデータベースのレイアウトとフィールドが一覧表示されているはずです。

あとの操作は、ほとんど直感的にできてしまいます。まず、左の「データベース」パレットから検索項目として使うフィールドを選び、右の「名称未設定ビルダー」ウインドウの「表示フィールド」リストにドラッグしましょう。フィールドはいくつ使っても構いません。

次に、「結果」タブをクリックし、同じようにしてパレットから検索結果として一覧表示するフィールドをドラッグします。このうち一つを選んで、右の「レコードの詳細へリンク」をチェックすると、結果一覧のうちこのフィールドが詳細画面へのリンクタグを持つように設定されます(図7)。

最後に、「詳細」タブをクリックし、レコードの詳細を表示するフィールドを同じようにドラッグします。ここで「更新を許可する」をチェックしたフィールドは、ブラウザ上で詳細結果を表示するときに、データの修正も可能になります(図8)。

以上の作業が終わったら、まず「ファイル」「保存」メニューでこのフォームビルダードキュメントを保存します(フォームビルダーで修正を行うときはこのドキュメントを開きます)。続けて、「ファイル」から「クエリードキュメントの作成」を選択してください。こちらはCGIが使うためのファイルです。address.qryなどの名前を付けて保存すると、図9のようにブラウザから呼び出す方法(URL)が表示されます。「URLをコピーして閉じる」を選択してください。これで準備完了です。

ブラウザからデータベースを操作する

では、ブラウザを起動して、実際にファイルメーカーを検索してみましょう。最初にTango.acgiと検索するデータベースも立ちあげておいてください(もちろんWWWサーバーは働いていなければ成りません)。

先ほどコピーしたURLをLocation(あるいはアドレス)欄にペーストし、<path to query document>の部分にCGIからの相対パスを記入してreturnキーを押します。図10のような検索画面が表示されましたね。実際に検索をしてみると、結果が図11のようになり、青いリンク部分をクリックすると図12のように詳細が表示されました。「更新を許可する」としたフィールドは、確かに編集可能なボックスになっています。

Tango Editorでクエリードキュメントを編集すれば、画面の表示やもっと細かいオプションを指定することももちろん可能。でも、これだけでも十分実用的なシステムとして働いてくれそうですね。

この、簡単にできるというところが重要です。例えば、Windows勢力との共存を図るためにイントラネットを導入しても、移行作業があまりに面倒だと、いっそデータベースもAccessなどのWindows製品で作りなおせということになりかねません。イントラネットのおかげでかえってシステム構築が大変になっては、本末転倒なのです。

Tangoのような仕組みを使えば、これまで蓄積した情報資産のより幅広い活用が可能になります。イントラネットに限らず、OCNなどを利用してサーバーを公開すれば、ファイルメーカーに蓄積した商品カタログをユーザーに直接検索してもらうということも簡単に実現できるわけです。Webとの連動という可能性を研究し、データベースの新しい活用方法をぜひ開発してください。

(MacFan 1997-06-01号)

*Tangoの製品紹介は内田洋行のTangoのページを参照