電子メールについてはスピードや手軽さの利点が強調されることが多いが、文書として記録が残るメリットをもっと意識しておきたい。しかもこの文書はワンタッチで多くの相手に同報することができる。検索可能な文書が記録・蓄積される電子メールは、迅速で確実な連絡の手段として、極めて有効だ。
※今回のポイント:
会議の開催を10人の出席者に連絡することを考えてみよう。電話はつながれば確実だが、何度もダイヤルしなければならないし、相手もそのとき都合がよいとは限らない。メモが取れずに用件が正確に伝わらない危険もある。
この場合にはファックスは電話より合理的だ。文書だから伝達漏れがなく、送信時に相手が不在でも構わない。それでもたくさんのファックスを送るのは手間がかかるし、相手はそれをもう一度スケジュール表に転記する必要がある。内容を秘密にしたくても、オフィスではだれが最初に受け取るか分からない。
これらと比較すると、電子メールは連絡手段としてはずっと効率的だ。相手が何人であろうと一括して連絡可能だし、受信者は会議のテーマや場所をパソコンのスケジュール表にコピーできる。しかもメールを開くのは基本的に本人だから、他の人の目に触れる心配もない。電子メールは、(1)電話やファックスのスピード、(2)ファックスや手紙の記録性、(3)電話や手紙の親書性という、それぞれの長所を兼ね備えているのだ。さらに保存・検索が容易な電子メールは、過去の経緯を確認する手段としても優れている。電話でありがちな、言った言わないの押し問答も、お互いに記録が残る電子メールでは生じる心配がない。
もちろんこのメリットは、メッセージがきちんと要点を押さえたものであることが前提だ。電話の場合は、不明な点は相手がその場で聞き返してくれる。電子メールでは返信で質問を送り、それに答えが届くとまた別の疑問点がでて再確認と、非効率なやり取りになる危険がある。
分かりやすい電子メールの書き方は、普通の報告書などの場合と基本的には同じだが、文字の大きさや字体によるポイントの強調ができないため、箇条書きや■などの記号をうまく使うなどの工夫が必要だ。箇条書きにすると自分も頭の中を整理しやすく、メールを書くことで考えがまとまるという効用もある。送信済みのメールを依頼事項などの控えとして参照することも多いから、きちんとしたメールを書くことは自分にとってもメリットがあるのだ。
電子メールの威力は、メッセージを同時に多くの人に送る機能にある。送信先欄に複数のアドレスを記述すれば、メールサーバーがメッセージのコピーを作成してすべての宛先に送信してくれる。
メールソフトには送信先として「To」「Cc」「Bcc」の三つが用意されている。
「To」(ソフトによっては「宛先」)はメッセージの本来の受け取り人を示す欄だ。議事録なら会議の出席者のアドレスを記入する。
「Cc」はメールを参考で送る宛先だ。会議に出席していない上司やオブザーバーにも参考で送るときなどに使う。Ccとは「カーボンコピー」の意味で、手紙をタイプライターで打つときにカーボン紙をはさんで写しを作り、関係者に配布したことに由来する。宛先をきちんと使い分けておくことで、このメールは他にだれが受け取っているか、まただれが参考情報として目を通しているかを、受信者も把握することができる。
「Bcc」は「ブラインド・カーボンコピー」の略で、この欄に記述したメールアドレスは、受信メールには記載されない。したがって、送信者とBccで送られた受信者以外は、このアドレスにもコピーが送られていることは分からない。たとえばたくさんの知人に転勤案内を送るとき、アドレスを列挙すると失礼になってしまう。こういう場合には「To」は自分あてにして「Bcc」欄に知人のアドレスを並べるという使い方ができる。
同報機能を使えば、電子メールによる会議も可能になる。時間に拘束されず、かつ自動的に議事録ができていくので、運用によっては効率的な会議が実現するだろう。アドレス帳に関係者のアドレスをグループ登録してもよいし、前回紹介したメーリングリストを利用することもできる。ただし対面の会議とは違って集中的な議論ができないので、内容が散漫になったり論点がずれてしまったりすることもある。実際の会議を時々開きながら、補助手段として電子メールによる議論を進めるのも一つの方法だ。
電子メールの同報機能はきわめて便利で強力だ。仕事上のやり取りを上司にCcで送っておけば、それがそのまま連絡・報告になる。わざわざレポートを書くことなく進捗状況を逐一知らせることができるわけで、業務上のコミュニケーションは大きく改善されるだろう。
ただし、すべてのメールをCcするのがよいかというと、必ずしもそうとは限らない。管理職には部下や他部署からメールが大量に届く傾向がある。あまりに細かい案件をCcで送っていると、上司が情報洪水に悲鳴をあげて、「Ccは直接自分あてではないから読まない」ということになりかねないのだ。
日本の会社組織とは不思議なもので、「他部署にメールを出す場合には上司を経由すること」というルールが定められていたりする。電子メールで業務フローを改革するのではなく、電子メールを従来の仕事の進め方に合わせて使うということらしい。こうした場合、管理職に届くメールの数は尋常ではなくなってしまう。管理職でなくても、電子メールの数が多すぎると感じる人は少なくない。参考メールは必要な範囲をよく考えて要所のみで送るようにするべきだろう。
電子メールは文字だけでコミュニケーションを行うが、「添付ファイル」機能を利用して伝える情報の種類を拡張できる。文字では表現できない図表やグラフは、表計算ソフトなどのファイルを「添付」してメッセージに加えるのだ。
ファイルを添付するには、メールソフトの「挿入」「メッセージ」などのメニューから「添付ファイル」を選び、ダイアログボックスで該当ファイルを選択する。専用ボタンが用意されていたり、ファイルをメール作成画面にドラッグするだけで添付できるソフトもある。
添付ファイルにはいくつかの形式があるが、最近は標準的な方法が普及してきたので、通常は形式を気にしなくてもよいだろう。ただしMacintoshからWindowsに送信する場合は、ファイルの「拡張子」に注意する必要がある。たとえばテキストファイルならファイル名の最後を「.txt」としておかないと、Windowsでは簡単に開くことができない。
また、添付するファイルのサイズは必ず確認すること。大きなファイルを添付すると、相手のメールボックスが溢れてしまうことがある。1MB(メガバイト)以上のファイルは、原則として添付ファイルにしない方がよい。電子メールは巨大なファイルを送ることを前提に作られていないので、添付ファイルはしばしばトラブルの種になる。速く届けようとして電子メールに添付した結果かえって迷惑をかけるくらいなら、宅配便などの利用も検討するべきだろう。
初出:『週刊ダイヤモンド』2000年4月29日・5月6日合併号