電子メールを受け取る

電子メールを受け取るのは楽しい。普段どんなにメール洪水に辟易していても、ずっと不義理をしていた友人から思いがけないメールが届くと嬉しいものだ。手紙にすると大げさでも電子メールなら気軽に送れるから、十数年ぶりの近況メールで交流が再開することも少なくない。もちろん仕事の連絡にもメールは活躍する。そして、それ以上に電子メールの世界は宝の山になりつつあるのだ。

※今回のポイント:

電子メールを情報源とする
メールマガジンやメーリングリストを活用すると、電子メールが最新のデータベースになる。
自動振り分けで差出人別に保存
分類は差出人別が確実で使いやすい。自動振り分け機能の使いやすさはソフト選びの重要ポイントだ。
一読した上で検索を活用する
読まずに保存したメールは検索しにくい。購読するのは目を通せる範囲にする方が賢明。

情報源としての電子メール

電子メールはメッセージ交換の手段としてだけでなく、さまざまな情報を集めるためにも活用できる。情報収集といえばまずWWWが頭に浮かぶが、ホームページを定期的にチェックして更新内容を確認するのは、なかなか面倒なものだ。その点、電子メールは自分のメールボックスまで届けてもらえるので、簡単かつ確実である。さらに、メールなら集めた情報が時系列に保存されていく。黙って待っているだけで情報が蓄積される電子メールは、情報収集の手段として最も効率のよい部類に入るだろう。

情報源になる電子メールの代表的なものとしては、メールマガジンメーリングリストがある。

  1. メールマガジンは、名前のとおり電子メールによって届けられる雑誌のようなものだ。「まぐまぐ」などの無料メールマガジン発行システムの登場によって、情報発信者が爆発的に増加し、いま最もホットなメディアのひとつになった。マスコミによるニュース速報から個人がつくるマニアックなミニコミまで、その種類は数万にも及び、しかも大半が無料で提供されている。企業や業界専門誌の発行するメールマガジンも多いから、仕事の基本情報をチェックする手段としても役立つだろう。

  2. 一方のメーリングリストは、電子メールを使ったテーマ別の掲示板のようなものだ。リスト用に設定された代表アドレスにメールを送ると、参加者全員にそのメールが配信される。メールマガジンが基本的に情報を受け取るだけのものであるのに対し、メーリングリストでは参加者が情報を発信することで話題が展開していく。活発なメーリングリストでは示唆に富んだ議論が交され、教えられることも多い。新しい規格の正式公開前に意見交換の場として開設されることもあるので、単なる情報収集以上の収穫が期待できる点も魅力だ。

メールマガジンはまぐまぐパブジーンなど、メーリングリストは月刊MLNewsなどでテーマ別に分類されたリストが用意されている。ここで自分に役立つものを探し、アドレスを登録すれば、定期的に自分のメールボックスに届くようになる。

これらは既存のメディアがカバーしないような細かい情報をもたらしてくれる場合もあり、情報ソースとして欠かせなくなりつつある。ただし内容の信頼度も千差万別なので、従来以上に鑑識眼が必要になることをふまえておくべきだ。

受信メールの効率的な整理

電子メールを活用するにつれ、受信メールの数は急増する。メールマガジンやメーリングリストが加わるとなおさらだ。受信メールの整理学は電子コミュニケーション活用の必須条件である。

フォルダへの分類

通常メールソフトは「フォルダ」にメールを分類管理する機能を持つが、どのような分類を設けるかは全ての整理学に共通する難題でもある。内容による分類は明快な基準作りが困難だし、ひとつのメールに複数の内容が書かれていることも珍しくない。

内容に依存しない方法としては、月単位でフォルダを用意し、その中で時系列にメールを保存していくという整理法がある。件名や差出人で一覧表を並べ替えれば関連するメールもまとめて把握できるので、それなりにうまく働きそうだ。ただしこの方法では、複数月にわたるプロジェクトのようなケースがうまく扱えないし、メールマガジンやメーリングリストを整理しにくいという難点もある。

実用的な方法として、ここでは差出人による分類を提案しておこう。メールアドレスなら微妙な判断が不要なので、機械的にすばやく分類できる。また「誰のメールに書かれていた」という記憶は「いつ頃のメール」より具体的なので、捜し物をする場合も差出人単位のフォルダが扱いやすい。もっともアドレスごとに全てフォルダを作っては数が多すぎて不便だから、会社(差出人アドレスのサーバー名)のような大きな単位で分けるとよいだろう。必要なら「ビジネス」「個人」などの大分類を設けてグループ化してもよい。年度ごとに同様のフォルダをつくって保管しておくと、一つのフォルダを無制限に膨らませずにすむ。

フィルタリングによる自動振り分け

適切なフォルダを用意しても、一件ごとに手作業で分類していてはいずれ限界がくるから、メールソフトの「振り分け」を利用する。これはあらかじめ設定した条件に従って、メッセージを適切なフォルダに移動してくれるという機能だ。この条件に差出人アドレスを使うことで、フォルダに間違いなくメールを分類整理できる。条件は「@xxx.co.jpを含む」のような部分一致でもよいから、会社単位の分類でもうまくいく。

ただし、メーリングリストやメールマガジンの差出人は、購読しているリストやマガジンに直接対応しないことが多い(たとえばメーリングリストはそれぞれの発言者が差出人になる)ため、この方法では具合が悪い。通常これらは件名の最初に[diamond:001]のような識別名(ラベル)が付加されるので、これを条件に使うと期待通りに振り分けられる。

振り分けの使い勝手はメールの処理能率に大きく影響するから、メールソフトを選ぶときは、デモ版や評価記事でこの機能をチェックしておくべきだろう。

分類整理から活用へ

メールマガジンやメーリングリストを購読すると、常に最新の情報がメールフォルダに蓄積される。ここからキーワードを使って情報を検索することができれば、電子メールが最新のデータベースに変身するわけだ。これを活用するための要となる検索機能は、単純なものから、複数キーワードやあいまいな条件で検索できるものまで、ソフトによってさまざまに異なる。単純に高機能だから検索し易いというわけでもないので、これもできるだけデモ版などを使って比較検討しておきたい項目だ。

ただしメールをデータベースとして活用するには、受信時におおまかにでもその内容に目を通しておくことが必要だ。辞書やデータベースは、キーワードを整理し、検索しやすいように設計されている。それに対してメールの本文は検索を意識して書かれているわけではないから、実際に何かを調べようとしたときに、どんな言葉をキーワードにどのフォルダを調べればよいか迷うことが少なくない。検索機能を駆使して情報を取り出せるのも、あらかじめメッセージを読んで見当がついていればこそである。

メールマガジンやメーリングリストは申し込みが簡単なため、面白そうなものをどんどん登録した結果、かなりの割合が読み切れずにフォルダの肥やしになっていく傾向がある。いつかは役に立つかも知れないと思って保存しているのだが、読んだこともないメッセージを検索して有益な情報を得られることは滅多にない。未読メッセージが増えるのは精神衛生上も悪いから、こうしたサービスは、きちんと目を通せる範囲に限っておく方が賢明だ。過ぎたるは及ばざるがごとしは、ここでも真実なのだ。

用語解説

振り分け
差出人の他に、件名、宛先などの条件によって、メールをフォルダに仕訳したり、自動的に返信したりする機能。ソフトによって「フィルタ」「メールルール」「アシスタント」などさまざまな呼び方をする。受信時にしか振り分けできないソフトもあれば、任意の時に振り分けを指示できるソフトもある。
検索キーワード
たとえばインターネット利用者数に関する記事を調べるとき、検索キーワードとして「インターネット利用者」「インターネット統計」「インターネット人口」のどれがよいかは、記事を読んでいなければわからないから当てずっぽうの検索になる。キーワードが整備されていない中でうまく検索することが、電子メールをデータベースとして活用する上でのポイントになる。
件名のラベル
メーリングリストやメールマガジンは、他のメールとの区別のために件名の最初に[diamond:001]のような識別名と通し番号を持つことが多い。メーリングリストの場合は、利用者が普通の件名を付けて投稿すると、配信時に自動的にこのラベルが付加される。

初出:『週刊ダイヤモンド』2000年4月22日号