ちょっとしたメモ

署名区切り行:sig-dashes

電子メールの末尾に区切り行"-- "を置くと、それ以降を署名とみなすのは、Usenetから受け継いだ伝統。よくできたソフトはこれを認識して署名部分をグレイ表示してくれたりする。パーソナル署名にちょっと仕掛けをしようと思っていろいろ実験をしていたら、これを返信にも賢く利用するメールソフトがあることに気がついた。

この署名のしきたりについて記述された文書としては、RFC 3676(RFC 2646の更新版)のセクション4.3. 'Usenet Signature Convention' がよく知られている。

There is a long-standing convention in Usenet news which also commonly appears in Internet mail of using "-- " as the separator line between the body and the signature of a message. When generating a Format=Flowed message containing a Usenet-style separator before the signature, the separator line is sent as-is. This is a special case; an (optionally quoted or quoted and stuffed) line consisting of DASH DASH SP is neither fixed nor flowed.

このように署名を区切るダッシュ2つ+スペースの行(sig-dashesと呼ぶらしい)があると、ThunderbirdやGmailは、それ以降をグレイ表示してくれる。大したことではないのだが、メリハリがあってなかなか気持ちはよい。

さて、このフォーマットをもう少し標準化しようという試みも最近まで行われていて、インターネット・ドラフト"News Article Format"の2003年4月の第11版までは、'4.3.2. Body Conventions'に次のような記述を含んでいた(それ以降、なぜかばっさり削除された)。

Whenever a poster or posting agent appends such a signature to an article, it MUST be preceded with a delimiter line containing (only) two hyphens (US-ASCII 45) followed by one SP (US-ASCII 32). ... Followup agents, when incorporating quoted text from a precursor, Ought Not to include the signature in the quotation. Posting agents Ought to discourage (at least with a warning) signatures of excessive length (4 lines is a commonly accepted limit).

ここでは、署名は "-- " で区切って、4行程度までにしておくべしといったことに加え、「返信を作成するときにソフトはこの署名部分を引用しないこと」という要件が目を惹く。

これはネットニュースの規約案だが、電子メールでも署名まで引用するのは(以下略)、というのはよくある話だよね。特に、行頭引用記号を用いないで、"-----Original Message-----"という行の後に原文が丸ごとくっついてくるタイプは、自分の署名が返信者の署名に化けてしまって、大変気持ちが悪かったりする(最近、この引用部分で、署名区切り"-- "の空白を削って=署名扱いにならない単なる"--"に変換して=くるのもあって、これはこれで不思議だ)。

で、Thunderbirdは、このsig-dashesで区切られた署名を見つけると、返信を作成するときにその部分を引用に含めないのだ。へぇ、こりゃ賢い。手元には同じような挙動をするものは見あたらなかったが、Sylpheedも返信用テンプレートの設定%qを用いれば署名を引用しないようだ(追記:試してみたらOperaのメーラーでもできた)。

もちろんこれは、sig-dashesを使っていなければ機能しない。 "-- " で署名を区切るというのは、(ツールも含めて)みんなが標準に準拠するともっとハッピーになれるという、もう一つの例でもあるわけだな…。

(追記:どうもgmailは、受信メールに"--"の行があれば、スペースなしでも署名区切りと見なすようだ。おまけに、sig-dashesで署名を区切ってメールを書いても、送信するときにスペースを削ってしまう。ちょっと買いかぶりだったか)

(追々記:手元のメールで確認したら、遅くとも2006-05-19までにはGmailからの送信はちゃんとsig-dashesになった模様)

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