いよいよ本命の登場。昨年9月のヨーロッパ音楽祭のライブから、まず第九だ。冒頭の6連符の刻みが雄弁に語りかけるところからしておおっと驚き、バロック・トランペットや細管トロンボーン、小型ティンパニの威力に圧倒される。第3楽章の弦楽器が、モダン・オーケストラでもこれだけ透明感を持って響くというのは感動的だ。第4楽章では、マーチのテンポがLCPとの録音に比べると速めになっているところが注目される。これはやはりベーレンライター版でのメトロノーム基準音符の修正なども関係しているのだろう。合唱では、残念ながらCherubの強調は無かった…。843小節目からのpoco Allegroをデタシェで弾き始めたのにはびっくり。

最後のPrestoでラトルの演奏が880小節目から'Welt'を繰り返しシャウトしているのが意味不明だと思っていたら、ノリントンはこの部分の'der ganzen Welt'という歌詞を'Welt'に向かってクレシェンドさせていた。なるほど、そういう意味ならラトルのやりたいことも分からないではない。

LCP盤の方が鮮烈さという意味では上回っているかも知れないが、この第九も素晴らしく新鮮で発見に満ちた演奏だ。そしてそれが、奇を衒ったような新奇さではなく、必然的な音楽として伝わってくるのが、ノリントンならでは。

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