新譜が追加されて全集の2/3まできたモーツァルト・エディションについてふたたび。

第9集:バイオリン・ソナタ全集
8枚組のCD。最初の2枚に、2001-05-14/15録音の、レミー・ボーデ(Rémy Baudet)のバロックバイオリンとベルダーのチェンバロ/フォルテピアノによる初期のソナタ(KV6~KV31)と変奏曲(KV 359, 360)。残る6枚に、1989年録音の、サルバトーレ・アッカルドVn、ブルーノ・カニーノPfによる後期ソナタ(KV296~KV547)を収録している。ボーデは18世紀o.などのコンサートマスターも務めており、切れ味のよい演奏を聴かせる。アッカルドのソナタは、もちろん優れたものだが、古楽器の初期ソナタに続けて聴くと、どうしても違和感が出てしまう。
第12集:交響曲Vol.1
ヤープ・テル・リンデン(Jaap ter Linden)指揮アムステルダム・モーツァルト・アカデミーが演奏した旧全集番号の30番まで(+45番:KV16~202)を5枚のCDにおさめたもの(2001-08/12録音)。これは素晴らしい。見たことのない団体の演奏なので警戒して手を出さずにいたのだが、モーツァルトの初期交響曲としてはベストと言ってもいいぐらいだ。リンデンはコープマンらと共に活動していたチェロ=ガンバ奏者で、2001年にこのオーケストラを結成したという。オランダはロンドンと共に古楽演奏のメッカのひとつだから、レベルが高くて当然なのかも知れないが、驚いた。Vol.2が非常に楽しみ(2002年11月下旬発売予定)。
第14集:魔笛+ラ・フィンタ・センプリーチェ(偽ののろま娘)
魔笛はマッケラス指揮スコットランド室内o.ほかの1991-07-13/22の録音で2枚組、センプリーチェはレオポルド・ハーガー指揮ザルツブルク・モーツァルテウムo.ほかによる1983-01-16/20の録音で3枚組。マッケラスの魔笛は、彼らしい考証を重ねたもので、ノリントンなどのピリオド系アプローチに通じる爽快さがある。ティンパニが甘いのと一部の歌手がイマイチなのが惜しい。センプリーチェは安心して聴ける演奏。
第16集:弦楽アンサンブル集
オルランドSQと今井信子による弦楽五重奏の3枚(1989録音)と、フランソワ・フェルナンデス(François Fernandez)、寺神戸亮、ライナー・ツィッパリング(Rainer Zipperling)によるトリオ1枚(1991-01録音)、ボーデほかによるデュオ、トリオなど2枚(2001-11/12録音)の計6枚組。トリオなどの3枚は、瑞々しい演奏で楽しめる。クインテットの方は、残念ながらちょいと期待はずれ。こういうタイプの演奏が好きな人もいるだろうが(実際BISから発売されているオリジナル盤を推薦する声も聞く)、せっかくのピリオド楽器による新録音に、こういうビブラートかけっぱなしの演奏を組み合わせて欲しくないと思ってしまう。

ここまでのところ、ブリリアントのCDは、新録音のものは奏者の有名無名を問わずみな水準が高い(モーツァルト・エディションに限らず)。ライセンスものは、悪い演奏ではないのだが、新録音とはアプローチが全く異なるので、オペラのように独立したものならともかく、ソナタ集のようなシリーズに混じってくるのは辛いという感じだ。

()