ポケベル連動でどこでも電子メールを

ポケベル(ページャ)は、かつては単なる呼び出し音が鳴るだけだったものが、数字やカナが送れるようになり、女子高生などの間では驚くべき「早打ち」でメッセージ交換をするのが流行しました。その後、携帯電話やPHSの陰に隠れてブームは衰えたかに見えますが、最近これに漢字サービスが加わったことで、ポケベルは新しい情報ツールとしての可能性が注目されています。電子メールと組み合わせると、自らチェックをすることなくメッセージが届く、「プッシュ型」の情報伝達が実現するのです。

いつ見るか、それが問題だ

前回取り上げたようなメールソフトの転送機能をうまく活用すると、オフィスのメールをプロバイダに送っておき、外出中でもPowerBookから内容を確認することが可能になります。これで、どんなときでも確実にメールを読むことができ、急ぎの用件に間に合わなかったり、ビジネスチャンスを逃してしまう心配はありませんね。

しかし、ここで残る問題は、メールをいつチェックするかということです。プロバイダに転送しただけでは、メールが届いたということは分かりません。結局ダイヤルアップ接続して自分でメールボックスを確認しなければならないわけですが、そのタイミングが、半日に1回でよいのか、1時間おきにする必要があるのかは難しいところです。頻繁にアクセスしたところで何も届いていなければ、電話代も無駄ですし、徒労感もつのります。かといって、緊急のメールを見逃してしまっては、せっかくのモバイルの威力が半減してしまいます。

伝統のプッシュメディアを活用する

ここで注目したいのが、最近はじまった電子メールをポケットベルに転送するサービスです。定められたアドレスに電子メールを送ると、その本文の最初の50文字程度を、ポケットベルに送り届けてくれるというものです。 NTTドコモが昨年から「インフォネクスト」シリーズの漢字表示方式サービスの一環として導入し、年末からは東京テレメッセージも「TMNET」として同様のサービスを開始しました(図1)。

ポケットベルは、受信者がアクションを起こさなくてもどんどんメッセージが届く「 プッシュ型」メディアです。携帯電話よりもハンディで、電波の届くエリアも広いとされています。さらに、電話のような1対1のやり取りだけではなく、一度の送信で多くのメンバーにメッセージを届ける同報性も兼ね備えています。このポケベルの機能を組み合わせることで、自らサーバーをチェックすることが前提の「プル型」メディアだった電子メールが、究極のプッシュメディアに変身するのです(図2)。

メール転送の方法

電子メールをポケットベルに送るには、本文にポケットベル送信用の命令を埋め込む方法と、アドレスに直接ポケットベルの番号を指定する方法があります。

本文に命令を埋め込む方式(図3)を使うと、エラーになったときにその旨の通知を受けることができます。しかし、転送するメールに命令を追加するのは困難ですから、新規メールとしてメッセージを送るとき以外には使えません。

ポケットベルへの送信方法(1):宛先(To)を pagercall@page.docomonet.or.jpとし、本文に" PBNO="に続けてポケットベル番号(市外局番から)、さらに" MSG="に続けて送信メッセージを記述する。件名(Subject)は空白のままで構わない。この方法で送信すると、エラーで届かなかった場合、その旨の通知が返ってくる。

扱いやすいのは、アドレスを直接指定する方法です。たとえば、NTTドコモの方式なら、 xxxx@page.docomonet.or.jp(xxxxはポケベル番号)のようなアドレスになります(図4)。オフィスに届いたメールをこのアドレスに転送すれば、その本文の先頭50文字(100バイト)が直ちに手もとのポケットベルに表示されるのです。

普通の設定では本文の先頭が送られますが、アドレスをxxxx.s@page...とするとSubject(件名)が、xxxx.sf@page...とするとSubjectとFrom(差出人)が表示されます。「s」オプションは件名を送るか本文を送るかの切換スイッチで、両方を合わせて送る方法がないのでどちらを使うかは微妙なところです。試してみた限りでは、件名だけでは何のことかよくわからないケースが多いようでした。本文の先頭で名前を名乗ってくれる人も多いので、通常の本文送付式のほうが実用的であるように感じます。

結構使える50文字

転送されるのが50文字だけというと少ないようですが、意外にこれは使いでがあります。連絡先の名前と電話番号は十分収まりますし、打合せの場所や時間の変更も問題なく伝えられるでしょう。社内でよく使われる略称も駆使すれば、大方の用件は50文字あれば了解可能なのです。

これは、伝達事項を受け取るだけなら、改めてプロバイダのメールボックスを確認しなくてよいということでもあります。外出中にメールが気になるのは、投げかけておいた案件に返信が届いているかも知れないというケースが多いのではないでしょうか。こんなとき、「了解しました」の一言がポケベルに届けば、それだけでOKですね。結果を知るために何度もダイヤルアップするより、ずっと精神衛生上もいいはずです。

ただし、こういう50文字メッセージを活用するには、 前回も取り上げた本文や件名の書き方に、共通の理解があることが必要です。せっかくの返信も、前半はすべてオリジナルメールの引用文で最後のほうにひとこと「了解」などと書かれているようなものだと、ポケベルに届いても何のことだかわかりません(図5)。また新規メッセージのときは、転送される50文字の範囲に名前が含まれていないと意味が不明なこともあります。ポケベルで受信してみると、「引用を使い過ぎずコンパクトに」「最初に名のる」といったメールのマナーの重要さが、改めて実感されます。

メールソフトの転送設定

前回も取り上げたように、多くのメールソフトは、Subject(件名)やTo(宛先)などに応じて、到着したメールをフォルダに振り分けたり転送したりする自動処理が可能になっています。この処理設定で転送先にxxxx@page.docomonet.or.jpを加えておけば、会社に届いたメールがポケベルにも送られるわけです(図6)。

このとき、何でもかんでもポケベルに届くとうるさくて仕方がありませんし、使用料もどんどん嵩みます(ポケベルは受信側も料金を負担します)から、条件設定を工夫して、急いで知りたいものだけを転送するようにしておきましょう(図7)。

サーバーでの対応

メールソフトの転送機能は、当然のことながら、ソフトを起動しているときでないと働いてくれません。24時間パソコンをつけたままにしておくのはハードウェア的にも不安ですし、セキュリティ上も認められないことが多いでしょう。

会社のメールサーバーがUNIX上で動いている場合は、「.forward」という特別なファイルを用意してもらうことで、届いたメールをすべて転送することができます。このために、NTTドコモでは「メール転送ツール」を用意して、簡単に転送設定ができるようにしています(図8)。また、AppleShare IP Mail Serverのように、サーバーの利用者登録画面で転送を設定できるものもあります(図9)。メールサーバーが転送してくれれば、パソコンの電源を心配する必要もなく確実ですが、このような設定が可能か(認められるか)どうかは、システム管理者と相談してみて下さい。

サーバー上での転送設定が使えないときは、「 メールUNO!」のようなインターネット上の転送サービス(ワンアドレスメール)を利用する手があります(図10)。これは、若干の初期設定料を払って登録すると、メールの末尾に数行の広告を加える代わりに、複数アドレスにメールを無料で転送してくれるというものです。ここに自宅、会社の他にポケベルのアドレスも加えておけば、全てのメールがいつでもどこでも受信できるようになります。また、 NIFTY-ServeBIGLOBEのポケベル転送機能(有料)を利用するのも一案です(図11)。

ポケベルの活用と限界

この他に、ポケベルは同報番号を持つことができるので、メール一通でメンバー全員に連絡を取ることが可能です。また、NTTドコモの「インフォチャネル」や東京テレメッセージの「P-Press」のような無料の情報配信サービスは、次々にニュースが届くなかなか実用的なもので、それだけでもポケベルを持つ値打ちがあると言っていいかもしれません(図12)。

一方、ポケベルは電波の到達度が高いとはいえ、地下鉄などに乗っている間はもちろん、ビル内でも時と場合によってはメッセージが届かないこともあります。そして、今のところ不達メッセージを自動的に再配信してくれる機能がないため、ポケベルがあるからと安心していると、重要なメールを見落とすという危険もあります。

これらの特徴を理解した上で、ポケベルと電子メールを連携させると、今まで以上にモバイル・オフィスの機動力が高まるでしょう。単なる無線呼出機から、新しい情報ツールに脱皮したポケベルを、もう一度見直してみる価値がありそうです。

(MacFan 1998-03-15号)