ホームページの計画から公開まで

ホームページを作ったけれどもなかなかアクセスが増えない、しばらく公開してみたけれどもほとんど更新もできず、ページを閉鎖してしまった・・・こうしたホームページの悩みを抱えているところは少なくないようです。これらの多くは、最初にきちんとした目的を持った設計を行っていないことが原因だと考えられます。企画が曖昧だと、作業が進むにつれて迷いが生じ、利用者にもメッセージが届かなくなるもの。そういった失敗を防ぐために、ホームページの設計から制作依頼、公開までに必要な手順について考えてみることにしましょう。

ホームページの設計

優れたホームページを作るためには、最初の設計がとても大切です。何となく作ったページからは、メッセージが伝わってきません。見た目の面白さによって一度は立ち寄ってくれた利用者も二回は訪れてくれませんし、作る側もこの先どんな情報を提供したら良いかわからず、次第にページは荒れ果てて行きます。

インターネット上には何十万というホームページがあるのですから、その中で存在意義を主張し、注目してもらえるようにするためには、ページの狙いや目的をはっきりさせることが必要です。そして誰が読者であるかを明確に意識し、それに応じた表現のスタイルを確立しなければなりません。まずこうしたマスタープランをつくることによって、実際の制作プロセスにおいても無用なトラブルを回避し、効率的な運営が可能になるのです。

ホームページ設計の5つの要素

上に述べたような設計を考えるにあたってのポイントを、5つの要素に整理してみることにしましょう(図1)。

◇利用者についての情報
Webが対象とする利用者は誰で、その利用者にとって最も重要な情報は何かを洗い出します。
◇Webの基本的な目的
当然のことながら、Webを運営する目的が不明確ではしっかりしたページは生まれません。企業姿勢をアピールしたいのか、利益を上げようとするのか、簡潔な言葉で書き出してみます。
◇具体的な目標
目的、利用者を定義したら、それらを達成するために「このWebで何をするか」という具体的な目標を定めます。
◇情報の範囲とソース
Webで提供する情報はどのようなもので、その素材はどこで集めるのか(社内にあるのか、データベースで調べるのか等)を明確にします。
◇ページ記述のスペック
目標の要素を整理し、具体的なページづくりのためのガイドラインを決定します。HTMLの使い方の基準や画像の扱いなどもここで明確にしておきます。

これらの要素は相互に関係し、Webの構築が進むにつれてダイナミックに変化することもありますが、最初にこのポイントをきちんと吟味することで、迷いや混乱のない作業が約束されます。(なお、このようなWeb設計の要素の考え方は、DecemberとGinsburgによる『HTML & CGI Unleashed』にも詳しく解説されているので、関心のある方は参照してみてください。)

ユーザーを重視するという立場

以上の設計ポイントを考えるにあたって特に注意を払いたいのが、利用者の視点に立つということです。ホームページは、豪華なグラフィックや社長の挨拶などで、自己満足のために作るわけではありません。広くユーザーに情報を提供したりコミュニケーションすることが目的であるはずなのですが、とてもそうは思えないページが多いことには驚かされます。

たとえば専門誌による調査をみても、企業ページへの不満は「更新頻度が少ない」「一方的な情報提供に終わっている」「画像が重すぎて時間がかかる」などが上位を占めており、逆に「グラフィックスが貧弱」という意見はほとんどありません(図2)。Java、VRML、Shockwaveなどの技術を使うことについては過半数の人が「重すぎる」「表現を凝るよりも、内容を充実させるべき」と答えています。(図3)。利用者の立場での設計が重要であることがよくわかりますね。

ページ制作の依頼

さて、今度は設計に基づいて実際のページを制作するわけですが、趣味のページならいざ知らず、組織を代表する本格的サイトを作る場合は、外部のプロダクションに依頼することが多いでしょう。このときに信頼できる委託先を見つけられるかどうかは、ホームページの運営にも直接影響することですから、重大な問題です。しかし、世の中に山ほど存在する「ホームページ制作請負サービス」の中から、安心して仕事を任せられるパートナーを見つけることはそれほど簡単ではありません。

一つのアイデアは、制作会社自身のホームページを開いてみて、どの程度その会社がWWWやHTMLという仕組みを理解しているかをチェックするという方法です。いくらグラフィックデザインが凝っていても、正しいHTMLを記述できないようでは、仕事を任せられる知識や技術を持っているとは考えられません。実際この手の「見掛け倒し」プロダクションが多いので、依頼側もしっかりとした鑑識眼を持つ必要があります。

画像タグをチェックする

HTML制作の技術を見るための最も簡単な方法は、ブラウザの「画像の自動読み込み」オプションを解除して、文字表示のみの状態でホームページを訪れてみることです。スクリーンにはどんなページが表示されたでしょうか。図4のように、画像を示すアイコンのみが散乱していて、全く何の情報も得られないようなページになってしまったら、その会社には制作を依頼しないほうが無難です。

インターネット上にはさまざまな環境でWWWを利用している人がいて、文字専用のブラウザで閲覧したり、回線速度の関係で画像表示をOFFにしている場合もあります。このために<img>タグのALT属性を使って代替文字を用意することは、HTMLを書くときの常識。特に画像ボタンにリンクを埋め込んでいるところでは、必須条件です。

こういう画像の使い方が正しくできないということは、HTMLを知らないというだけではありません。そもそも利用者の環境を考え、その立場で発想するという基本的な姿勢が欠如しているわけで、これではとても仕事を頼めないということになります。

見出しタグをチェックする

もうひとつのチェックポイントは、<h1>などの見出しタグの使い方です。HTMLは文書の「構造」を記述するもので、どの要素が重要で骨格はどうなっているかを示し、機種に依存しない表現や、文書の多角的な活用を可能にすることが本来の目的です。そのために、文書の見出しに<h1>から順番に正しいタグを設定していくことは、やはり基本中の基本と言って良いでしょう。これが<h1>の次に<h4>が来るようなでたらめになっていたり、<font size>を指定して文字を大きくするだけでは、HTMLの力が十分に発揮されないのです(図5)。

そんなことをうるさく言っても無意味だという意見もあります。しかし、素人が作るならともかく、制作会社のショーケースともいうべき自社ホームページがいい加減な文法で書かれていては、やはり能力のレベルを疑わざるを得ません。

わかった上で表現の工夫をするのと、単にHTMLをレイアウト言語と勘違いしているのとでは、雲泥の差があります。あいまいな知識で仕事をされると、とんでもないページが納品され、それを公開したこちら側が恥をかくことになりかねないのです。

制作そしてメンテナンス

適切な制作会社が決まれば、あとはオリエンテーション→試作プレゼンテーション→内容調整→チェック→公開という流れで作業が進んでいきます(図6)。最初の設計がきちんとできていれば、ここから先はスムーズに進むはずです(現実はなかなかそうは行きませんが)。

さて、こうしてホームページが完成しても、メンテナンスがまた大変ですね。実はこの更新のルールも、設計段階の「情報の範囲とソース」の中で検討しておくべきポイントなのです。どんな情報をいつどこから集めるかが明確なら、更新も自然にきちんと行われるでしょう。逆に、制作が完了してからメンテナンスのことを考えていたのでは、タイミングも遅れますし、何よりページ構成が更新を前提としていないために毎回作り直しということにもなりかねません。

ホームページに限らず、大きなプロジェクトは最初が肝心です。良い設計と良いパートナーの獲得に力を注ぎ、効果的なホームページの、効率の良い運営を実現してください。

(MacFan 1997-07-15号)