ダイヤルアップ接続とPPP

マッキントッシュならMacPPPなど、ウインドウズ95なら「ダイヤルアップネットワーク」でサーバーの種類を設定するときにお目にかかるPPP。接続のために必要なものらしいけど、まさかモデムが「ピー」というからPPPというわけじゃあるまいし・・・

PPPって何だ?

自宅でインターネットを利用するとき、ほとんどの人は電話回線からダイヤルアップ接続をしていることでしょう。このときにお世話になるのがPPPです。PPPとはPoint to Point Protocolの略で、電話線などを使って2つのポイント(コンピュータ)をネットワーク接続するための手続きを定めています。

第1回にインターネットではTCP/IPという約束に則ってデータを送受信するという説明をしましたが、この約束は接続のための物理的な媒体については定めていません。つまり、オフィスのLANを経由してインターネットに接続するのか、電話線を使ってプロバイダにつなぐのかということは、TCP/IPは関知しておらず、逆に制約もないのです。

LANや電話線のようなネットワークの伝送手段には、それぞれの方法を定めたルールが用意されています。郵便という通信ルールとは別に、その運搬手段としての鉄道や道路にも固有のルールがあるのと同じことですね。

電話線をネットワークにしてくれるPPP

さて、PPPはこれらの約束事の中で、シリアル回線(つまり電話線)を使ってデータをやりとりするためのルールです。その基本的役割は、2点間できちんとデータ交換ができることを確認し(接続の確立)、データをカプセル化して運ぶということです。

電話の場合は、LANなどと違って普段は接続されていないものですから、まずデータを送る前に本当に相手とつながっていることを確認しなければなりません。また、電話が切れてしまったり、あるいは長い間データのやりとりがない状態が続いたりしたときは、しかるべき手続きで情報交換のセッションを終了させるというのもPPPの仕事です。

カプセル化の働きは、利用者とプロバイダの間を結ぶフェリーのようなものを考えてください。データを載せたIPというトラックは、荷物ごとPPPフェリーに乗って島(利用者)と大きな港(プロバイダ)の間を移動します。プロバイダに到着したらトラックはフェリーを降り、もっと大きな道路(幹線ネットワーク)に乗り換えて目的地まで走っていくというわけです。

私の住所はどこ?

ところで、前回までの説明で、インターネットではIPアドレスという住所が全てのコンピュータに与えられていて、その番地を頼りにデータのやりとりを行うのだとお話ししてきました。でも、何だか変だと思いませんでしたか? ふつう、プロバイダと(ダイヤルアップで)契約するときは、自分のIPアドレスというものは与えられません。ソフトの設定も「サーバーからアドレスを取得」とするだけで、具体的なアドレスは空欄のままです。住所のない私は、いったいどうやってインターネットに接続して情報のやりとりをするのでしょう?

現在、インターネットの利用者は爆発的に増加しており、近い将来に32ビットのIPアドレスを使いきってしまう懸念があります。そのため、ダイヤルアップ利用者のように、常時接続していないコンピュータはIPアドレスを固定せず、ある範囲のアドレスをプロバイダに用意しておき、接続するたびに利用可能な番号を割り当てるという方法を採っているのです。

PPPによる接続が成功すると、利用者はサーバーからその時空いているIPアドレスを受け取ります。これによって初めて、住所不定の身から解放されて、インターネットの一員としてデータのやりとりができるようになるわけです。

ダイヤルアップ接続は、電話をかけたときのみインターネットの一部になるという、ある意味では不完全な形態です。せっかくの双方向性や即時性も、ネットワークと切り離されている状態ではその力を発揮できません。必要なときにプロバイダ側から電話をかけてくれるというサービスもありますが、やはり常時接続で本来のインターネットを実現したいもの。昔は電話を引くだけでも贅沢なことでした。それを思えば、庶民が専用線を利用できるようになるのも、別に夢物語ではないはずなのです。

(NetFan, February 1997)

関連するRFC