ハードウェアについて考える
SOHOのためのパソコン講座 - 2 -

コンピュータを使って個人が情報を生み出す。理屈はとりあえずよしとしよう。これを実際に行うためには、どんな準備が必要になるか。

コンピュータの基本構成

具体的なガイドに進む前に、コンピュータの大まかな構成を振り返っておくことにする。全体の構図が頭に入っていれば、些末な話に惑わされずに必要なものを判断できるからだ。

コンピュータシステムは、大きくわけると人間とコンピュータが情報をやりとりするための「入力」「出力」と、内部で情報をあつかうための「記憶(蓄積)」「情報処理」の4つの部分からなる。

「入力」とはキーボード、マウスのようなコンピュータに情報を与えるための装置である。音声や画像を取り込むための様々な機器も入力の役割を担う。「記憶」にはメモリとかRAMとか呼ばれる作業スペースに相当するものと、ディスクのように、情報を保管して必要な時に取り出せるようにする装置の2つがある。オフィスにたとえれば前者は机、後者は引き出しやキャビネットのようなものだ。「情報処理」とはコンピュータの中心部分で、カタログなどではCPUとかプロセッサと書かれている。性能や値段はおおむねこれに左右されると考えてよいだろう。「出力」は処理結果を外部に伝えるための機能で、もっとも基本的なものはディスプレイ画面である。もちろんプリンタも重要な出力装置の一つだ。

これらの区分は当たり前と言ってしまえばそれまでだが、基本構成はどんなに複雑なコンピュータでも同じだから、この4つの部分をきちんと把握するのは重要である。自分のシステムを考える場合も、漠然とコンピュータというのではなく、それぞれの部分を目的と照らして見ていけば、より適切な選択ができるはずだ。

選定に当たって考える点

コンピュータを選ぶときに最初に迷うのが、どの程度の性能(情報処理能力)の機種にするかという点だろう。雑誌を読むと、マルチメディア時代には高性能コンピュータでないと対応できない、大は小を兼ねるからできるだけ高機能なものを買え、と書いてある。本当にそうだろうか。入門機種を買うと時代についていけず、結局損をすることになるだろうか。

端的に言って、少なくともここで検討するような情報活用を実践するのに高級な機械は必要ない。最近は入門機でも一昔前の大型コンピュータ並の能力を持つ。3次元グラフィックを駆使したりするならともかく、個人情報の処理には入門機クラスのもので十分である(営業車のためにポルシェを買う人はいないでしょ?)。

メモリとディスクは、もういちど机/引き出しの比喩で考えてみると分かりやすい。確かに机が広いほど仕事はしやすく、引き出しもたくさんあるほうが便利ではある。しかし、日記を書くのに会議テーブルなど不要だし、普段使わない書類はキャビネットに整理するのが普通だ。これと同じで、メモリもディスクも、無闇に大きいものを持つことはない。メモリは標準構成のままで構わないし、ディスクは足りなければ外付けのものを後から追加すればよいのだ。

むしろ、内蔵のハードディスクはそこそこのものにとどめ、入れ替え可能な外付けドライブ(リムーバブルディスク)の購入を考えてはどうだろう。常時使うものだけを手元(内蔵ディスク)に置いて、大きな画像ファイルやあまり使わない情報は別のディスクに書き出しておくようにすれば、情報の整理という点からも望ましいし、バックアップ(大切なデータの複製保存)もやりやすい。

キーボードやディスプレイは付属品という感じが強いかもしれないが、これらは人間が直に接する部分なので、意外に重要である。とくにディスプレイは、品質の悪いものを使うと目も疲れるし、画面が小さすぎると狭い机で作業をするのと同じで効率が悪くなる。場所が許す範囲で、できるだけ大きく画像がシャープなものを選ぶようにしたい。むしろ本体の予算を節約してでも、よいものを購入するべきである。

プリンタは、最初からどうしても必要というわけではない。コンピュータを使い込んで、アウトプットが出てくる頃にじっくり選んでもいいだろう。ただ紙への出力は、実用的な目的だけでなく、情報の吟味という点からも重要であることは頭に入れておきたい。

ほかに、情報収集(入力)という観点から考慮すべきなのがCD-ROMとモデムである。CD-ROMは大量の情報を簡単に入手する手段として、今後不可欠になるものとみてよい。メーカーのカタログがCD-ROMで提供されるのもそう遠くないのではないか。

モデムとは、コンピュータを電話回線に接続するための機械のことである。これを使って、パソコン通信やインターネットを利用すれば、情報の世界は飛躍的に拡大する。通信の重要性については稿を改めて述べるが、モデムは是非とも備えたいものの一つだ(注1)。

機種構成の実際

例として筆者の環境を見てみよう。

近頃の製品と並べれば最低クラスのスペックだろうが、これで不自由を感じたことはない。インターネット用の画像も処理できるし、原稿書きやデータ処理にもちゃんと働く。店頭でこのような旧型の機種が大幅値引きで売られていたら一考の価値ありだ(注2)。

また、ステレオにラジカセ/ミニコンポがあるように、コンピュータにも基本部分がそろった一体型/セットのものがある。使わない機能が付いていて無駄に感じることもあるが、買ってすぐにスタートできる手軽さはありがたい。自力でシステムを考えるのが難しい場合には賢明な選択と言えると思う。

Mac vs. Windows?

最後に、巷間を賑わすMacintoshかWindowsかという選択について。これに関して言えるのはただ一つ、身近に質問できる人が持っている機種に合わせておくのが無難ということだけだ。数年前まではMacはあこがれのマシンだった。最近はとりあえずWindowsが羽振りがよい。では数年後は?

コンピュータの世界で、そんな先のことは誰にも分からない。大事なのは機械ではなくあなたの情報なのだから、それが確実に活用できれば機種はどれでもいいのである。そして、どの機械を使おうが、きちんとしたプランさえあれば、情報は将来にわたって確実に生かしていくことができる。この次には、そうした点からソフトウェアの選択と使い方について考えてみたい。

(初出:「酒販ニュース」96年4月11日号)

注1
モデムはアナログの加入電話線をコンピュータにつなぐ装置。ISDNOCNを導入するときはTA (Terminal Adapter) を使う。
注2
記載した環境は、1994年末ごろに用意したものだが、周辺機器を追加しつつも、1997年後半でもほぼこの構成で実用になっている。別に筆者がケチなわけではなく、これで十分なのだ。