ロジャー・ノリントンの話

ロジャー・ノリントンは、ロンドン・クラシカル・プレイヤーズとのピリオド楽器による演奏(HIP)で古典からロマン派の作品に新しい光を投げかけてきました。さらに1998年からシュトゥットガルト放送響(SWR)の首席となり、HIPの成果を生かした新しい世界を開きつつあります。

Sir Roger Norrington has led to a complete rethinking and rejuvenating of the Classical repertoir, and is now establishing new musical frontier beyond modern/period criteria. See English homepage.


ジャニーヌ・ヤンセンと共演するノリントン(2008年来日公演のステージリハーサル)

最新トピック

2010年5月12、13日に来日公演が予定されています。

最近のマイクロブログへの投稿から、ノリントン関連情報を抜粋しています。ネットラジオでの演奏会ライブはRDFカレンダー版ネットラジオ情報もどうぞ。

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ノリントンの最近の話題から

ノリントン+シュトゥットガルト放送響2010来日公演

2010年の来日は、もともと予定されていた中国、韓国へのツアーを延長する形で実現したので、短期間の滞在になりそうです。しかし、ノリントンは2011年でシュトゥットガルトの首席を退くので、このコンビの来日は最後になるかもしれませんね。

公演日会場プログラム
5月12日横浜みなとみらいホール ハイドン:交響曲第1番;ブラームス:バイオリン協奏曲;ドボルザーク:交響曲第7番
5月13日サントリーホールハイドン:交響曲第1番;ブラームス:バイオリン協奏曲;エルガー:エニグマ変奏曲

4月下旬の定期演奏会で取り上げるブラームスとドボルザークを持ってのツアーですが、日本でのVn独奏は、定期で弾くダニエル・ホープではなく、パク・ヘユンだそうです。

ノリントン+シュトゥットガルト放送響2008来日公演

2月8日川崎公演

〔写真〕ベートーベンのピアノ協奏曲第4番を弾き終えて拍手を受けるノリントンと小菅優 〔写真〕ブラームス交響曲第1番のあと大喝采を受けるノリントンとシュトゥットガルト放送響

各地の公演を経て最終日に至ったノリントンは、さすがに疲れてホールで仮眠を取ったりしていましたが、それでもリハーサルはポイントを押さえてこなし、元気も回復した様子。ミューザ川崎の音響や客席の配置も気に入って「いいホールだ」を連発し、さらにショッピングモールと隣接して便利なことに感心して、「64もレストランがあるんだとさ」と喜んでいました。

このホールは客席で聴くのは初めて。3階の上手の席をとったところ、音量も弦と管のバランスもまずまずでしたが、背中を向ける形の第2バイオリンの音があまり届かずやや残念。オーボエもやや埋もれる感じだったかな。思ったより残響は少なめで、直接音の成分が多い印象ながら、逆に言えばクリアな音で、細部まで良く聞き取ることができました。

協奏曲は、ピアノを内側に入れてソリストが客席に背を向ける、ファンにはおなじみの配置。3つの楽章それぞれの個性が際立っていて、楽しかったです。なかでも終楽章は、ここはこうだったのか、という発見がいっぱいありました。弦楽器の、一音もいい加減に弾かない徹底したフレージングは見事でしたね。

ブラームスの冒頭は、最初の1音が今まで以上に強いアクセントで驚かされますが、フレーズの抑揚は予想外に控えめで、すごい推進力の前回よりもむしろ丁寧な序奏。第2楽章は派手なポルタメントがなかなか効果的でした。第3楽章では、ホールの響きになれないのかアンサンブルが少し乱れたりもしたものの、終楽章はそれぞれの見せ場でしっかり唸らせつつ、圧倒的なコーダで締めくくってくれました。倍管の効果が良く出たリッチな音も堪能できましたが、やはり弦のフレージングが素晴らしい。上から見下ろしていると、なるほどこういう弾き方でこういう音作りになるのかと、魔法を見ているような気分でした。

ノリントンは、来日するたびに日本の聴衆がワンダフルだと繰り返していますが、特に今日はお客さんの反応がよかったように思います。ステージ上の奏者も含め、会場全体がいい雰囲気だったのは、演奏ももちろんですが、川崎ミューザの客席と舞台の近さもあるのでしょう。素敵な演奏会でした。

東京の演奏会の翌日には、SWR2のラジオのニュースで日本公演の様子が現地レポート入りで紹介され、オーケストラ事務局からは早くも演奏会の成功を伝えるニュールレターが送られてきました。シュトゥットガルトからは、1月30日の演奏会を聴く(+日本観光)ツアーが組まれたりと、この来日公演はかなり力が入っていた模様です。また近いうちに、再来日してくれることを期待します。

1月30日東京公演

〔写真〕リハーサルで指揮するノリントン

冒頭のトリルとイギリス民謡風の旋律が印象的な《すずめばち》序曲は、ノリントンが「たぶん日本初演だ」と言ってましたが、どうなんでしょうか。今回の来日公演ではイギリス系の曲がメインにないので、序曲とはいえ結構気合が入っていました。

中プロの協奏曲は、ジャニーヌ・ヤンセンの意欲的なソロもあって、これぞメンデルスゾーンという演奏だったのですが、サントリーホールはちょっと器が大き過ぎる感じで、2階センターでは音がすごく遠く聴こえてしまいました。座席によるのかもしれません(リハーサルを2階サイドで聴いたときは素晴らしかった)が、もう一回り小さなホールなら、もっと良さが出ていたはずと惜しまれます。

エロイカは、ノリントンの演奏を知る人ならある意味でお馴染みなわけですが、それでも細部のアーティキュレーションは、一層凝ったものになっていました。たとえば第1楽章第2主題の表情とか、第2楽章冒頭のベースとかね。第2楽章終結部(228小節目)の不協和音が、あんな風に哀切に満ちて響くのを聴いたのは初めてです。

エロイカでは木管を倍管にし、弱音部や明晰さが欲しいところでは奏者の半分近くを休ませるという、最近ノリントンが愛用する方法で、ダイナミックレンジをさらに広げて鮮やかなコントラストを描いていました。ホルンも朗々と歌うかと思えばゲシュトップで苦悩の音を搾り出し、トランペットもナチュラルに持ち替えて切れ味良い響き。サウンドとしては申し分ないのですが、しかし、やはり残念なことに、ホールの残響が細かなニュアンスを吸収してしまって、面白さが十分生きていないという恨みが残りました(たとえば、強奏からスビトピアノで絶妙なフレーズを歌い始めても、前の音の残響がかぶってしまって、フレーズの頭が不明瞭になってしまう)。これも座席によるかもしれませんが、もったいないことです。

それはともかく、全体としてはノリントンらしい演奏で、ブラボーが飛び交っていましたし、本人も近年の中で最高のベートーベンだとご満悦でした。

1月29日ステージリハーサル

RSOシュトゥットガルトを率いての3回目の来日公演。29日の昼間にはたっぷりリハーサルを行い、いよいよ公演シリーズが始まります。

写真は29日のステージリハーサルの様子です。公演日程は次のとおり:

公演日公演地会場SULRVWFMBLB-PLB-SJBR
1月30日東京サントリーホール---
1月31日大阪フェスティバルホール---
2月1日広島広島国際会議場フェニックスホール ---
2月2日福岡福岡シンフォニーホール ---
2月4日仙台イズミティ21・大ホール ---
2月6日金沢石川県立音楽堂コンサートホール ---
2月7日名古屋愛知県芸術劇場コンサートホール---
2月8日川崎ミューザ川崎シンフォニーホール ---

2/2(福岡)のみ昼公演、他は夜公演です。プログラムは以下のようになります。

  • SUL ... サリバン:歌劇「近衛騎兵隊」 序曲
  • RVW ... ヴォーン=ウィリアムズ:劇音楽《すずめばち》序曲
  • FMB ... メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲(Vn:ジャニーヌ・ヤンセン)
  • LB-P ... ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番(Pf:小菅優)
  • LB-S ... ベートーベン:交響曲第3番
  • JBR ... ブラームス:交響曲第1番

放送響のシーズンプログラムには1/29、2/5にも東京・サントリーホールという記載があるのですが、招聘元のツアースケジュールには掲載されていないので削除しておきます。リハーサル、もしくは特別演奏会ということかもしれませんだそうです

ノリントン+シュトゥットガルトのモーツァルト交響曲集

ノリントンとシュトゥットガルト放送響は2006年9月のヨーロッパ音楽祭でモーツァルトの交響曲の連続演奏を行いましたが、そのライブ録音が6枚組みのCDとしてヘンスラーから発売されました。

これらのモーツァルトの交響曲は、2006年9月にシュトゥットガルトで行われたヨーロッパ音楽祭で2週間にわたって録音されたものです。初期から最後の10作に至る20以上の交響曲が、モーツァルトの創作の素晴らしい幅広さを示すために選ばれました。その中には、交響曲の「タイプ」(シンフォニー、セレナーデ、オペラ序曲)がそれぞれ含まれ、彼が交響曲を書いた各年代からの作品があります。シュトゥットガルト放送響とのいつもの演奏のように、私たちはその時代の演奏スタイルを可能な限り再現しようとしており、それぞれの交響曲の初演時と同じサイズの編成を用いています(一番小さなものはたった18名です!)。

モーツァルトの素晴らしい創造力を、さまざまに異なるオーケストラのサイズと、異なる創作時期を通じて、皆さんに十分楽しんでいただけることを願います。さらに、音楽祭の場において演奏者と聴衆の間に交わされたコミュニケーションも味わっていただければ。

サー・ロジャー・ノリントン

6セットの内容は次のとおり:

  1. (93.211)第1番 K.16、第25番 K.183、第41番 K.551
  2. (93.212)第12番 K.110、第29番 K.201、第39番 K.543
  3. (93.213)第8番 K.48、ニ長調 K.320、第40番 K.550
  4. (93.214)第22番 K.162、第33番 K.319、第38番 K.504『プラハ』
  5. (93.215)第19番 K.132、第34番 K.338、第36番 K.425『リンツ』
  6. (93.216)第32番 K.318、第28番 K.200、第35番 K.385『ハフナー』、第31番 K.297

N響Cプログラムのリハーサル

 

Cプログラムのリハーサルでは、2日目に庄司紗矢香さんを迎えてのベートーベンのバイオリン協奏曲。例によって細かく表情付けをしていきます。オーケストラ、ソリストともにとてもよい雰囲気で、ノリントンは"wonderful", "super"を連発していました。リハーサル終了後も、庄司さんを呼んで細かなフレージングの臨時レッスンを行うなど、期待の高さも伺わせます。

N響のみなさんの、(個々人としては100%賛成かどうかにかかわらず)「ピュア・トーン」への積極的な取り組み、フレージングの要求への的確な反応に、ノリントンはいたく感銘を受けていて、「フレージングを求めてもお座なりにしかやらないオーケストラだってあるのに、素晴らしい」と何度も言っていました。

Bプログラムのモーツァルトについて「本当に踊り出したくなるような演奏という感想がたくさんあった」と伝えたら、「でも、立ち上がって踊らなかっただろ;-)」と言いつつ、嬉しそうな様子でした。

来日、N響とのリハーサル始まる

 

いよいよ目前に迫ったN響定期デビューのリハーサルが始まりました。モーツァルトの39番の第3楽章から練習を始めて、しばらくアーティキュレーションなどを直した後、15分ほどしてからおもむろに「ところでビブラートだけど」と切り込み。N響のみなさんも織り込み済みだから、すんなりノン・ビブラートの演奏になって、いい感じでした。ビブラートの代わりにフレージングを細かく付けたり、ポルタートの練習をしたり、快速テンポだったりと、ノリントンの音楽を知る人にはお馴染みの話ですが、N響のみなさんにはかなり新鮮だったようです。

面白かったのは、比較的大きめの編成で木管を倍管にしつつ、序奏以外のpの箇所では奏者を減らすという試み。シューマンやメンデルスゾーンでも、緩徐楽章は弦楽器奏者の一部を休ませていましたが、今回は楽章単位ではなく、fとpで奏者の数を変えてきました(休みになった奏者は手持ち無沙汰で気の毒なような気もしますが)。

N響の皆さんは、人によって多少違いはあるものの、おしなべてよく反応していて、ノリントンも「来たぞ、来たぞ」と、手応えを感じているようでした。演奏会が楽しみです。

〔2日目〕オーケストラの響きが違ってきました。エルガーのチェロ協奏曲は、素晴らしい出来映えです。石坂さんグレイト!