Norrington News
モーツァルト交響曲集がドイツでレコード批評家賞を受賞
ノリントン+シュトゥットガルト放送響によるモーツァルトの交響曲集が、「ドイツレコード批評家賞(Preis der Deutschen Schallplattenkritik)」の2008年第1期ベストレコードのひとつに選ばれました。これは100名以上の批評家や編集者で構成される協会が、年4回、部門ごとに優秀レコードを選定するもので、モーツァルト交響曲集は、Konzerte und Orchestermusik部門で選ばれた3つの録音のひとつになっています。
ノリントン+シュトゥットガルト放送響2008来日公演
2月8日川崎公演

各地の公演を経て最終日に至ったノリントンは、さすがに疲れてホールで仮眠を取ったりしていましたが、それでもリハーサルはポイントを押さえてこなし、元気も回復した様子。ミューザ川崎の音響や客席の配置も気に入って「いいホールだ」を連発し、さらにショッピングモールと隣接して便利なことに感心して、「64もレストランがあるんだとさ」と喜んでいました。
このホールは客席で聴くのは初めて。3階の上手の席をとったところ、音量も弦と管のバランスもまずまずでしたが、背中を向ける形の第2バイオリンの音があまり届かずやや残念。オーボエもやや埋もれる感じだったかな。思ったより残響は少なめで、直接音の成分が多い印象ながら、逆に言えばクリアな音で、細部まで良く聞き取ることができました。
協奏曲は、ピアノを内側に入れてソリストが客席に背を向ける、ファンにはおなじみの配置。3つの楽章それぞれの個性が際立っていて、楽しかったです。なかでも終楽章は、ここはこうだったのか、という発見がいっぱいありました。弦楽器の、一音もいい加減に弾かない徹底したフレージングは見事でしたね。
ブラームスの冒頭は、最初の1音が今まで以上に強いアクセントで驚かされますが、フレーズの抑揚は予想外に控えめで、すごい推進力の前回よりもむしろ丁寧な序奏。第2楽章は派手なポルタメントがなかなか効果的でした。第3楽章では、ホールの響きになれないのかアンサンブルが少し乱れたりもしたものの、終楽章はそれぞれの見せ場でしっかり唸らせつつ、圧倒的なコーダで締めくくってくれました。倍管の効果が良く出たリッチな音も堪能できましたが、やはり弦のフレージングが素晴らしい。上から見下ろしていると、なるほどこういう弾き方でこういう音作りになるのかと、魔法を見ているような気分でした。
ノリントンは、来日するたびに日本の聴衆がワンダフルだと繰り返していますが、特に今日はお客さんの反応がよかったように思います。ステージ上の奏者も含め、会場全体がいい雰囲気だったのは、演奏ももちろんですが、川崎ミューザの客席と舞台の近さもあるのでしょう。素敵な演奏会でした。
東京の演奏会の翌日には、SWR2のラジオのニュースで日本公演の様子が現地レポート入りで紹介され、オーケストラ事務局からは早くも演奏会の成功を伝えるニュールレターが送られてきました。シュトゥットガルトからは、1月30日の演奏会を聴く(+日本観光)ツアーが組まれたりと、この来日公演はかなり力が入っていた模様です。また近いうちに、再来日してくれることを期待します。
1月30日東京公演

冒頭のトリルとイギリス民謡風の旋律が印象的な《すずめばち》序曲は、ノリントンが「たぶん日本初演だ」と言ってましたが、どうなんでしょうか。今回の来日公演ではイギリス系の曲がメインにないので、序曲とはいえ結構気合が入っていました。
中プロの協奏曲は、ジャニーヌ・ヤンセンの意欲的なソロもあって、これぞメンデルスゾーンという演奏だったのですが、サントリーホールはちょっと器が大き過ぎる感じで、2階センターでは音がすごく遠く聴こえてしまいました。座席によるのかもしれません(リハーサルを2階サイドで聴いたときは素晴らしかった)が、もう一回り小さなホールなら、もっと良さが出ていたはずと惜しまれます。
エロイカは、ノリントンの演奏を知る人ならある意味でお馴染みなわけですが、それでも細部のアーティキュレーションは、一層凝ったものになっていました。たとえば第1楽章第2主題の表情とか、第2楽章冒頭のベースとかね。第2楽章終結部(228小節目)の不協和音が、あんな風に哀切に満ちて響くのを聴いたのは初めてです。
エロイカでは木管を倍管にし、弱音部や明晰さが欲しいところでは奏者の半分近くを休ませるという、最近ノリントンが愛用する方法で、ダイナミックレンジをさらに広げて鮮やかなコントラストを描いていました。ホルンも朗々と歌うかと思えばゲシュトップで苦悩の音を搾り出し、トランペットもナチュラルに持ち替えて切れ味良い響き。サウンドとしては申し分ないのですが、しかし、やはり残念なことに、ホールの残響が細かなニュアンスを吸収してしまって、面白さが十分生きていないという恨みが残りました(たとえば、強奏からスビトピアノで絶妙なフレーズを歌い始めても、前の音の残響がかぶってしまって、フレーズの頭が不明瞭になってしまう)。これも座席によるかもしれませんが、もったいないことです。
それはともかく、全体としてはノリントンらしい演奏で、ブラボーが飛び交っていましたし、本人も近年の中で最高のベートーベンだとご満悦でした。
1月29日ステージリハーサル
RSOシュトゥットガルトを率いての3回目の来日公演。29日の昼間にはたっぷりリハーサルを行い、いよいよ公演シリーズが始まります。
写真は29日のステージリハーサルの様子です。公演日程は次のとおり:
| 公演日 | 公演地 | 会場 | SUL | RVW | FMB | LB-P | LB-S | JBR |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 1月30日 | 東京 | サントリーホール | - | ○ | ○ | - | ○ | - |
| 1月31日 | 大阪 | フェスティバルホール | ○ | - | ○ | - | ○ | - |
| 2月1日 | 広島 | 広島国際会議場フェニックスホール | ○ | - | ○ | - | ○ | - |
| 2月2日 | 福岡 | 福岡シンフォニーホール | - | ○ | ○ | - | ○ | - |
| 2月4日 | 仙台 | イズミティ21・大ホール | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
| 2月6日 | 金沢 | 石川県立音楽堂コンサートホール | - | ○ | - | ○ | - | ○ |
| 2月7日 | 名古屋 | 愛知県芸術劇場コンサートホール | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
| 2月8日 | 川崎 | ミューザ川崎シンフォニーホール | ○ | - | - | ○ | - | ○ |
2/2(福岡)のみ昼公演、他は夜公演です。プログラムは以下のようになります。
- SUL ... サリバン:歌劇「近衛騎兵隊」 序曲
- RVW ... ヴォーン=ウィリアムズ:劇音楽《すずめばち》序曲
- FMB ... メンデルスゾーン:バイオリン協奏曲(Vn:ジャニーヌ・ヤンセン)
- LB-P ... ベートーベン:ピアノ協奏曲第4番(Pf:小菅優)
- LB-S ... ベートーベン:交響曲第3番
- JBR ... ブラームス:交響曲第1番
放送響のシーズンプログラムには1/29、2/5にも東京・サントリーホールという記載があるのですが、招聘元のツアースケジュールには掲載されていないので削除しておきます。リハーサル、もしくは特別演奏会ということかもしれませんだそうです。
ノリントン+シュトゥットガルトのモーツァルト交響曲集
ノリントンとシュトゥットガルト放送響は2006年9月のヨーロッパ音楽祭でモーツァルトの交響曲の連続演奏を行いましたが、そのライブ録音が6枚組みのCDとしてヘンスラーから発売されました。
これらのモーツァルトの交響曲は、2006年9月にシュトゥットガルトで行われたヨーロッパ音楽祭で2週間にわたって録音されたものです。初期から最後の10作に至る20以上の交響曲が、モーツァルトの創作の素晴らしい幅広さを示すために選ばれました。その中には、交響曲の「タイプ」(シンフォニー、セレナーデ、オペラ序曲)がそれぞれ含まれ、彼が交響曲を書いた各年代からの作品があります。シュトゥットガルト放送響とのいつもの演奏のように、私たちはその時代の演奏スタイルを可能な限り再現しようとしており、それぞれの交響曲の初演時と同じサイズの編成を用いています(一番小さなものはたった18名です!)。
モーツァルトの素晴らしい創造力を、さまざまに異なるオーケストラのサイズと、異なる創作時期を通じて、皆さんに十分楽しんでいただけることを願います。さらに、音楽祭の場において演奏者と聴衆の間に交わされたコミュニケーションも味わっていただければ。
サー・ロジャー・ノリントン
6セットの内容は次のとおり:
- (93.211)第1番 K.16、第25番 K.183、第41番 K.551
- (93.212)第12番 K.110、第29番 K.201、第39番 K.543
- (93.213)第8番 K.48、ニ長調 K.320、第40番 K.550
- (93.214)第22番 K.162、第33番 K.319、第38番 K.504『プラハ』
- (93.215)第19番 K.132、第34番 K.338、第36番 K.425『リンツ』
- (93.216)第32番 K.318、第28番 K.200、第35番 K.385『ハフナー』、第31番 K.297
シュトゥットガルト放送響2007/08シーズン
シュトゥットガルト放送響の2007/08シーズンのプログラムが発表されています。ノリントンが指揮する定期演奏会は次の5つです。- 2007-09-20/21: ブレット・ディーン「Intimate Decisions für Viola solo」; ヒンデミット「白鳥を焼く男」; チャイコフスキー「交響曲第5番」
- 2007-12-13/14: ウェーベルン「夏の風の中で」; モーツァルト「クラリネット協奏曲」; 武満徹「ファンタズマ/カントス」; エルガー「エニグマ変奏曲」
- 2008-02-21/22: バッハ「管弦楽組曲第1番」; ベルク「バイオリン協奏曲」; メンデルスゾーン「交響曲第5番」
- 2008-04-17/18: ブラームス「ピアノ協奏曲第2番」; マルティヌー「交響曲第5番」
- 2008-07-10/11: エルガー「チェロ協奏曲」; ドボルザーク「交響曲第9番」
これまでのように集中して取り上げる作曲家は見られませんが、チャイコフスキーの5番や新世界はぜひ聴いてみたいものです。ノリントン自身は、ブレット・ディーンの新作を楽しみにしているみたいです。
ヘンスラーから“ロマンティクス”DVD発売
“肖像”というタイトルでお知らせしていたDVDが、ようやく"NORRINGTON | The Romantics"として発売されました。遅くなった分、合計で3時間半という豪華な内容になっての登場です。収録されているのは1995〜2004年に制作された3つの番組:
- ワーグナーへの道(パルジファル、トリスタン、マイスタージンガー)
- 死と直面して:チャイコフスキーの悲愴
- エクトール・ベルリオーズ「海賊」序曲
いずれもノリントンへのインタビューをはさんだリハーサルの風景と、演奏会での全曲演奏で構成されています。ユーモア満点かつポイントを押さえたリハーサルから“シュトゥットガルト・サウンド”が生まれてくる様子がよく分かります。演奏内容ももちろん素晴らしく、絶対お勧めです。
惜しいのは、日本語字幕があまりにもお座なりなところ。ドイツ語部分はまだいいのですが、英語のところはないに等しいというか、ほとんど意味をなしていません。最近のライナーノートの訳に関する問題も含め、このあたりは一度整理してみたいと思います。
マーラーとベルリオーズのCD
CDも続々出ています。マーラーでは復活が必聴です。特に中間楽章の美しさは絶品。定期演奏会ではマーラーは一段落していますが、残る交響曲もぜひ取り上げてもらいたいものです。
ベルリオーズは、2003年の定期演奏会から「ベンヴェヌート・チェッリーニ」がCD化されました。「ロメオとジュリエット」もCD化してほしいのですが。
ヘンデル・ハイドン協会の芸術顧問に就任
ノリントンは2007年1月からボストンのヘンデル・ハイドン協会の芸術顧問に就任しました。初顔合わせとなった1月12日の演奏会は、ボストン・ヘラルド紙が「協会は信頼できる人に任された(in good hands)」と書いたように、とても評判もよかったようです。
就任の機会を捉えて、ボストン・グローブ紙がNorrington steps to the podium at H&Hという興味深い記事を掲載したので、翻訳しました。ビブラートなしで演奏するのは「歴史的な背景からだけではなく、それが美しいから」という大切なポイントがおさえられています。
N響Cプログラムのリハーサル
Cプログラムのリハーサルでは、2日目に庄司紗矢香さんを迎えてのベートーベンのバイオリン協奏曲。例によって細かく表情付けをしていきます。オーケストラ、ソリストともにとてもよい雰囲気で、ノリントンは"wonderful", "super"を連発していました。リハーサル終了後も、庄司さんを呼んで細かなフレージングの臨時レッスンを行うなど、期待の高さも伺わせます。
N響のみなさんの、(個々人としては100%賛成かどうかにかかわらず)「ピュア・トーン」への積極的な取り組み、フレージングの要求への的確な反応に、ノリントンはいたく感銘を受けていて、「フレージングを求めてもお座なりにしかやらないオーケストラだってあるのに、素晴らしい」と何度も言っていました。
Bプログラムのモーツァルトについて「本当に踊り出したくなるような演奏という感想がたくさんあった」と伝えたら、「でも、立ち上がって踊らなかっただろ
」と言いつつ、嬉しそうな様子でした。
来日、N響とのリハーサル始まる
いよいよ目前に迫ったN響定期デビューのリハーサルが始まりました。モーツァルトの39番の第3楽章から練習を始めて、しばらくアーティキュレーションなどを直した後、15分ほどしてからおもむろに「ところでビブラートだけど」と切り込み。N響のみなさんも織り込み済みだから、すんなりノン・ビブラートの演奏になって、いい感じでした。ビブラートの代わりにフレージングを細かく付けたり、ポルタートの練習をしたり、快速テンポだったりと、ノリントンの音楽を知る人にはお馴染みの話ですが、N響のみなさんにはかなり新鮮だったようです。
面白かったのは、比較的大きめの編成で木管を倍管にしつつ、序奏以外のpの箇所では奏者を減らすという試み。シューマンやメンデルスゾーンでも、緩徐楽章は弦楽器奏者の一部を休ませていましたが、今回は楽章単位ではなく、fとpで奏者の数を変えてきました(休みになった奏者は手持ち無沙汰で気の毒なような気もしますが)。
N響の皆さんは、人によって多少違いはあるものの、おしなべてよく反応していて、ノリントンも「来たぞ、来たぞ」と、手応えを感じているようでした。演奏会が楽しみです。
〔2日目〕オーケストラの響きが違ってきました。エルガーのチェロ協奏曲は、素晴らしい出来映えです。石坂さんグレイト!
ブラームス交響曲全集DVDとマーラー交響曲4番CD発売
ブラームスは何とDVDとして登場してきました。2005年の定期演奏会のライブかと思っていたら、シーズン終了後にセッションを行って3日間で収録した模様。曲によって違いがありますが、全般的にライブよりもややゆっくり目のテンポ運びになっていて、細部がよく分かる演奏です。
マーラーの4番は、結局ブラームスのDVDと同時に国内発売となりました。もちろんシュトゥットガルト・サウンドですが、テンポはかなり速めでめりはりの利いた、自然な流れの演奏です。ライナーノートはノリントンの解説も含めて日本語訳付き。
〔補足〕8月21日にはNHK-FMでマーラー「復活」の演奏が放送されました。
シュトゥットガルト放送響2006/07シーズン&ノリントン契約延長
シュトゥットガルト放送響とノリントンの契約が2011年まで延長されることになりました。ノリントンは次のようにコメントしています。
シュトゥットガルト放送響と私はこの数年間、芸術面でも人間的な面でも、特別に近しい関係を築いてきました。私たちの実り多い共同関係が、2007年から更に4年間延長されることをとても嬉しく思います。「シュトゥットガルト・サウンド」を一層磨き上げることができますし、オーケストラのレパートリーに音の造形の面で大きな発展をもたらすことができるでしょう。それは、作曲家たちにとっては自然だったものであり、私にとってはこの上なくエキサイティングな光景なのです。
2006/07シーズンには、ブルックナーやブリテンに取り組むほか、2006年9月にはシュトゥットガルトのヨーロッパ音楽祭でモーツァルトの連続演奏が予定されています。主なものは次のとおり:
- 2006-09-05/17: ヨーロッパ音楽祭モーツァルト
- 2006-10-04/07: ワーグナー:ヴェーゼンドンク歌曲;ブルックナー:交響曲第3番
- 2007-01-24/26: ブリテン:シンフォニア・ダ・レクイエム;4つの海の間奏曲ほか
- 2007-04-24/29: ブルックナー:交響曲第4番ほか
- 2007-05-22/26: 演奏旅行(ブルックナー:交響曲第3番ほか)
- 2007-06-21/24: エルガー:バイオリン協奏曲;RVW:交響曲第4番
- 2007-07-08/14: シューマン:ピアノ協奏曲;ブルックナー:交響曲第6番
ベルリオーズのレクイエムCD
ノリントンが以前インタビューで語っていたとおり、2003年のベルリオーズ・フェスティバルの演奏からレクイエムがSACDとのハイブリッドでCDになり、2006年4月に発売されました。
合唱、両翼の金管バンダに4人がかりのティンパニと、写真を見てもすごい舞台ですが、演奏も豪華です。もちろん、「ピュア・トーン」の繊細な響きもききもの。
N響客演のスケジュール発表
N響への客演は、2006年11月1日、2日の第1580回定期(サントリーホール)と、同10日、11日の第1581回定期(NHKホール)で、ようやくスケジュールが発表されました。いちおう、お伝えしてきたとおり「ベートーベンとイギリスの作品の組み合わせで2プログラム」になっています。チケットは7月30日から発売だそうです。
- 11月1日、2日
- エルガー/「ロンドンの下町」序曲 作品40
- エルガー/チェロ協奏曲 ホ短調 作品85(Vc:石坂団十郎)
- モーツァルト/交響曲 第39番 変ホ長調 K.543
- 11月10日、11日
- ベートーヴェン/ヴァイオリン協奏曲 ニ長調 作品61(Vn:庄司 紗矢香)
- ヴォーン・ウィリアムズ/交響曲 第5番 ニ長調
両ソリストとも意欲的という話が伝わってきており、楽しみです。
さらに、(こっちが先に発表されちゃったので紹介すると)11月5日にはNHK音楽祭でN響を指揮します。音楽祭での演目は、モーツァルトの「後宮からの誘拐」序曲と交響曲39番K.543およびエルガーのチェロ協奏曲(Vc:石坂団十郎)です。
CD続々発売
少々ご無沙汰している間に、新譜、再発、CD-Rが続々登場しています。hänsslerからはマーラーの1番と、シューマンの1+3、2+4の3枚、ELSからは2005年2月、5月の演奏会から早くもブラームスが出てきたほか、ゲヴァントハウスとのRVW+ブラ4という魅力的なCD-Rも現れました。また東芝EMIからは、長らく廃盤になっていた(あるいは国内発売すらなかった?)LCPとのブラームス、シューベルト、シューマン、モツレクなどが年末に一挙に再発される模様です。
さらにhänsslerからは、9月に演奏されたばかりのマーラー4番と、何とまだ演奏されていないマーラー5番も、2006年2月5月にはCDとして発売することが発表されています。こんなに調子に乗っていいのかと驚くほどのペースです。
『モーストリー・クラシック』誌でインタビュー掲載
『モーストリー・クラシック』2005年7月号の「出番です」セクションで、見開き2ページにわたるノリントンのインタビューが掲載されています。

1950年代の古楽演奏から始まって、LCPでの「時代は受け継いでいく」という考え方に基づく演奏領域の拡大、そしてシュトゥットガルトとのチャレンジや最近の悲愴の録音まで、バランスよく、ポイントをきちんと押さえた記事となっています。アイキャッチにも使われている、「研究を元にした演奏は、研究成果を重要視しすぎて無味乾燥になりがちですが、そうなっていません」という問いかけに対するノリントンの答えは:
私は演奏というものは、インスピレーションに基づいて考えられたアイデアがみなぎっていなければならないと思っています。演奏には絶対というものがありません。過去の偉大な演奏、例えばヴィルヘルム・フルトヴェングラーの演奏は面白いと思います。その面白さは、正しいからというのではなく、面白く素晴らしい考えがたくさんつまっているからです。私もそうありたいといつも思っています。フルトヴェングラーと自分は比べられないと思いますが、情熱を持って、いろんなアイデアのつまった演奏を目指しているということでは、共通していると思います。
ノリントンの言葉の中でももっとも好きなもののひとつである not because pure tone is "authentic" but because it is beautiful, expressive and exciting.
と同じですね。
メンデルスゾーン交響曲
メンデルスゾーンの録音が正式にhänsslerから発売されました(2005-05-19確認)。1、5番の組み合わせと3、4番の組み合わせの2枚で、いずれもボーナストラックにノリントンのレクチャー入りです。2番はCD-Rでは出てますが、こちらはCDとしては見送りのようです。ノリントンは、CDに寄せたメッセージで編成について次のように述べています:
私たちは、作曲家が期待していたであろうサイズのオーケストラで演奏しています。それは、ある場合はモーツァルト時代のウィーンやメンデルスゾーン時代のライプチヒで典型的だった45人規模ということになります。しかし私たちはしばしば、ウィーンの慈善演奏会や低ライン地方の祭典で行われた、倍のサイズの拡大版オーケストラも用います。このメンデルスゾーンの録音では、みなさんは両方のサイズを聴いてみることができます。
1番は弦楽器が8-8-6-4-3という小さめの編成ですが、他の曲は何と、基本的には14-14-12-10-8という大編成で演奏しながら、緩徐楽章のみを8-8-6-5-4として演奏しているのです。面白いことを考えたものです。
ボーナストラックの内容は、時間ができたら紹介してみたいと思います。なお、シューマンの交響曲は秋の発売予定ということです。
シュトゥットガルト2005/06シーズン
シュトゥットガルト放送響の2005/06シーズンのプログラムが届きました。近々SWRのサイトでブローシュアが公開されると思いますが、まずノリントン関係の概要を紹介します。
ブラームスは2005年の交響曲に続きピアノ協奏曲を、さらにマーラーは交響曲の2, 4, 5番に取り組みます。ノリントンが指揮する定期演奏会は:
- 2005-09-22/23: ブラームス:ピアノ協奏曲第2番;マーラー:交響曲第4番
- 2005-11-24/25: エルガー:コケイン;ティペット:コレルリの主題による弦楽のためのファンタジア・コンチェルタンテ;RVW:交響曲第2番
- 2006-01-19/20: 陳其鋼(Qigang Chen):新作管弦楽作品;マーラー:交響曲第5番
- 2006-03-16/17: ワーグナー:パルシファル; バッハ:カンタータBWV 82;バッハ:管弦楽組曲第3番
- 2006-07-06/07: マーラー:交響曲第2番
定期演奏会以外に、9月のツアーでブラームスのピアノ協奏曲第1番を演奏します。また10月下旬には中国ツアーが予定されており、ここで陳其鋼の新作の世界初演を行った上で、2006年1月に欧州初演するという段取りになるようです。
2006年7月にはISCMのフェスティバル、同9月にはヨーロッパ音楽祭にも出演することが告知されています。
プロムス2005は初日のコンサートを指揮
2005年のプロムス音楽祭は、7月15日にノリントン指揮BBC交響楽団の演奏で幕を開けるようです。演目はベルリオーズ、メンデルスゾーン、ベルリオーズにティペットで、特にティペットのオラトリオ「我らの時代の子」というのはなかなかお目にかかれないプログラムです。BBCのRadio 3でライブ放送するので、インターネット経由でも聴けると思います。
なお、4/26のGuaidianが Purcell's 17th century opera The Fairy Queen will complete the first evening's programme, conducted by early music specialist Sir Roger Norrington.
と報じていますが、何が間違ったんでしょうか(パーセルの「妖精の女王」は7/17にPaul McCreesh指揮のGabrieli Consort & Playersが演じます)。
読売新聞にインタビュー掲載
2005年3月29日付の読売新聞夕刊に、「音の実験 古きをたずねる」と題したノリントンのインタビューが掲載されました。

ノリントンとシュトゥットガルト放送響の新しいサウンドのインパクトを紹介しながら、「ビブラートを多用する華麗な音色を良しとする聴衆」の抵抗感や“歴史的な正しさ”論争に触れた後、ノリントンの次のようなことばが引用されます。
「だから私は、もう“ノン・ビブラート”と呼ぶのはよそう、と言っているんです。ピュアな音、リアルな音、または暖色系の温かい音、と呼べばいい」
さらに、昨年の来日公演でも話題になった、「中央奥の指揮者を向いて楽員が同心円状に座り、ピアニストは客席に背を向ける独特な並び方」について。
「20年以上前、リハーサルで楽団とピアノの息が合わなかったので、そう並べ替えたら一体感が上がり、問題が解決してしまった。後からそれが、歴史的にも昔、行われていたレイアウトだと分かったんだ」
「ピュアサウンド」を現代曲にも拡げていくことや、次の来日について。
昨今はノン・ビブラート奏法を現代作品にまで広げ、演奏様式の潮流をさらに変革する。「ニコラス・モーという人のバイオリン協奏曲を演奏した時は、作曲家自身が感心してくれた。日本の楽団にも来年客演しますが、開かれた姿勢さえあれば成功しますよ」
某楽団は、さて開かれた姿勢を示してくれるか。文:宮下博氏、写真:田村充氏。
1829年版マタイ受難曲
2005年2月5日にOAEと演奏した、“メンデルスゾーンが1829年に復活上演した版に基づく”バッハのマタイ受難曲は、案の定、賛否両論だったようです。メンデルスゾーン版は、マタイの半分以上をカットして、オーケストレーションや和音、一部のソロパートすらも変更しているとのこと。それを現代ではどんな位置づけとして再現すべきなのか、ノリントンならずとも悩むところでしょう。
ひとことでいえば、2月9日付Financial Timesが述べているように、Not surprisingly, it feels like a different work.
となるわけです。それを、興味深い試みとして捉えるか、ナンセンスとして退けるか、批評家の意見も様々だった模様。
2004年ベストコンサート
『音楽の友』2005年2月号の年間ベストコンサート特集で、ノリントンとシュトゥットガルト放送響の来日公演が2004年の第1位に。前回(2001年)のときは第6位だったので、今回もまぁ上位には入るだろうと思っていましたが、1位になるとはね。同点1位がヤンソンス指揮のロイヤル・コンセルトヘボウですが、同誌でドイツの年間2位にノリントン指揮ロイヤル・コンセルトヘボウが入っているのと合わせるとなかなか面白いです。(ちなみに、VPO、BPOの来日公演はそれぞれ4、5位)
また、『パイパーズ』2005年2月号には、特別インタビューとしてノリントンの記事が6ページにわたって掲載されています。
メンデルスゾーン+シューマン交響曲のCD-R
2004年9月に行われたメンデルスゾーンとシューマンの交響曲連続演奏が、正規CDの発売に先立って、En Larmesから登場しました。シューマンの4番は、1841年版による演奏です。2005年にはhänsslerからも出てくると思いますが、魅力的な内容です。取り急ぎ。
ブラームスVn協奏曲とワルキューレのCD-R
ちょっと古い1998年のBPOとのブラームスVn協奏曲(w/ナイジェル・ケネディ)と、2004年7月のワーグナーの演奏がCD-Rで登場。Vn協奏曲は当時NHKでも放送されたもの。ワルキューレの第1幕は、悲愴とカプリングされているパルジファルと同じ音楽祭での演奏です。
ワーグナーは、文句なく素晴らしいです。ブラームスは、BPOの重心の低い演奏やときに不安定ともいえる丁々発止なやりとりが好みかどうかにもよりますが、同じケネディがテンシュテットと演奏したCDより楽しいと思います。
2004来日記念インタビュー
シュトゥットガルト放送響と二度目の来日を果たしたノリントンにインタビューしました。演奏論から楽譜の解釈、今後のプランまで、盛りだくさんな話の一端をご覧下さい。
2004日本公演


RVWの第6交響曲の素晴らしさ、マーラーの大胆かつ繊細な演奏、ベートーベンのピアノ協奏曲に見る古典演奏の粋など、いろんな局面を見せてくれました。関係者の努力でプログラムにベートーベンの第5交響曲が加わったのもありがたかったです(公演の簡単な振り返りとRDFical版公演スケジュール)。
「ピュア・トーン」の悲愴リリース
ご存知の通り、シュトゥットガルト・サウンドの悲愴が登場しました。演奏はもちろん素晴らしく、特に終楽章は必聴です。ノリントンは、1998年にLCPと「チャイコフスキー体験」をやっていますし、チャイコフスキーに関する演奏論も書いていて、実はかなり深い研究に基づいた演奏。詳しくは、また改めて紹介します。取り急ぎ、44分台という演奏時間はヤンソンス、フェドセーエフ(43分台)、カラヤン(45分台)と同じ程度で、どこぞのCD紹介で書かれているような「異常な速さ」では決してありません。1、2楽章はやや速めですが、3、4楽章はむしろゆったりした流れの中で、音楽をしっかり語っているというところです。
セント・ルーク管とのシューベルト
2004年4月にセント・ルーク管と行ったオール・シューベルト・プログラムの演奏会評が、4月17日付のニューヨーク・タイムズに "Pouring Great Old Wine Into Some Very Old Skins" と題して掲載されています。ノリントンがピリオド・アプローチで新しい音楽体験を提供したことを紹介した後、モダンオーケストラであるセント・ルーク管でも、驚くほどの違いがあることを述べています。
So did the Orchestra of St. Luke's under Sir Roger, its music director from 1990 to 1994, in a sparkling and under-attended all-Schubert program at Carnegie Hall on Thursday night. St. Luke's is not, of course, an original-instruments ensemble, but it was striking what a difference Sir Roger achieved by applying a few basic precepts ― well, one basic precept, playing without vibrato.
This familiar effect, a gentle throbbing from the strings, is standard today, but Sir Roger maintains that it wasn't prevalent until the 20th century, and tries to get rid of it. The result, on Thursday, was like stripping off a layer of thick varnish: the instruments were brash, less blended, a little awkward, exuberant and full of energy, bracing as waves crashing on a shoreline (Sir Roger had fun with abrupt loudness.) You could say it sounded younger, even adolescent; and you could say that in this it fit the music of Schubert, who wrote most of it in his 20's.
セント・ルーク管は10月21日付の同紙で "Orchestra Finds Success Staying Light on Its Feet" と、今ニューヨーク(あるいは全米)で最も成功している自主的オーケストラとして紹介されており、ノリントンとの今後の活動も楽しみです。
なお、同じシリーズの ニューハンプシャーでの演奏について、岩崎さんによる「音楽って楽しい!そしてもちろん素晴らしい。ノリントンさんに教えられたこと。」という暖かい演奏評が読めます。
ノリントン70歳の誕生日を祝う
3月16日はノリントン70歳の誕生日。その直前には、シュトゥットガルト響とチャイコフスキーの悲愴、ライプチヒやウィーンに出張してのヴォーン=ウイリアムズとベートーベンの田園(来日公演の曲目です)という演奏会が行われたり、SWR2でインタビューや演奏を交えた「ノリントンの音楽史散歩」という特集番組を7回シリーズで放送したりと、多彩な催しが行われます。
「悲愴」の演奏会は、ノリントンのコメントを交えたテレビ番組になるほか、CDとしても発売される予定ということです。また、2003年の定期演奏会で取り上げた「幻想交響曲」も、hänsslerから正式に登場します。
誕生日の前日、3月15日にFinancial Timesに掲載されたインタビュー記事を翻訳掲載しました。
2004カンヌ・クラシック賞受賞
シュトゥットガルト響との第九は、2004年のカンヌ・クラシック賞(Cannes Classical Award 2004)にも輝きました。
ノリントンの第九が2003年レコード・アカデミー受賞
レコード・アカデミー大賞銅賞(交響曲部門1位、総合3位)だそうで、「演奏新時代!」とかいう評者のコメントが今更で笑いを誘いますが、まぁ結構なことです。(2003-12-22)
ベルリオーズのCDが2種類
2002/2003シーズンのベルリオーズの演奏から、CDが登場しました。ずいぶん前にhänsslerから発売されたはずながらちっとも国内の店頭に並ばなかった「キリストの幼年時代」は、ようやく入荷。あまり知られていないながら美しい名曲で、ノリントン/SWRの演奏も素晴らしいものです。
また、同じシーズンの「幻想交響曲」は、ライブをCD-Rで送り出してくれるLive Supremeから。LCPとの録音と基本コンセプトは同じですが、少しゆったりと構え、いろいろな仕掛けをより強調していて、“阿片を飲んで幻覚を見た”という感じがリアルです。演奏に多少の傷はあるものの、期待通り面白く楽しめます。
ノリントン+シュトゥットガルト=世界8位?
『音楽の友』2003年8月号の特集の一部として15名の評論家、ライターが世界のベスト10オーケストラを投票した結果、単純集計ではシュトゥットガルト放送響が第8位という結果に。まぁ吉村渓も書いているように、客観的なランクと言うよりも最近来日したりして印象が強かったオケが上位に来たりするはなはだ主観的なものではあるが、ノリントン+シュトゥットガルトが注目されていることは間違いなさそう。
ブラ4のCD-R登場
Live Supremeから、2002年のシュトゥットガルト放送響とのライブでブラームスの4番が登場。ちょっと録音が歪んだりしてますが、演奏としては素晴らしいものです。どの部分がどうというのではなく、音楽が喜びに溢れて流れています。
(※ノリントン+シュトゥットガルト放送響によるブラームス4番の演奏というのは、2002年には記録がありません。2000年3月、7月に取り上げていますので、こちらが放送されたものを音源にしているのではないかと思われます)
初のDVDでモーツァルト39番のリハーサルを
ノリントン初のDVDが、6月下旬にパイオニアLDCから「名指揮者の軌跡」シリーズの第5巻として登場しました。1996年にシュトゥットガルト放送響とモーツァルトの交響曲39番を演奏した時の、リハーサルと演奏会の様子を収録したもので、リハーサル28分+本番31分の60分DVDです。1996年といえばシュトゥットガルト放送響の首席に就任する前の時期。初々しさと緊張感のあるリハーサルで、ノリントンがモーツァルトの音楽をどうやって形にしていくのかが見られます(音楽雑記帖の記事も参照)。
ベートーベン交響曲全集完結、さらにグレートも!
シュトゥットガルト放送響との第九の録音が2003年3月に登場したのを皮切りに、5月上旬に5+6番、7+8番、5月下旬には1+2番、3+4番と立て続けに発売され、ノリントン2度目のベートーベン交響曲全集が完結しました。2002年8〜9月のヨーロッパ音楽祭のライブ録音で、いっそう磨きがかかった表現は、LCPとの名盤に優るとも劣らぬ素晴らしさです。
ジャケット写真は、いずれも指揮するノリントンのアップ。
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この全集と合わせて、シューベルト「グレート」も発売されました。これも極上です。
川口さんのイラスト
文京図案室の川口澄子さんから、来日公演の指揮ぶりをモチーフにした素敵なイラストを送っていただきました。(2001-12-27)
音友に吉村渓さんによるインタビュー掲載
『音楽の友』2002年1月号に、吉村渓さんによるノリントンへのインタビューが掲載されました。来日公演の話、シュトゥットガルト放送響の話などと共に、ノリントンの音楽観にも、コンパクトに、的確に切り込んでいます。
ハリウッド映画に登場する人物は完璧なメイクを施され、みんなカッコよく見えるでしょ(笑)? あれと同じで、常時ヴィブラートをかけ続けることでオーケストラ全部の音が均らされ、「それらしく」整ったように聞こえるんです。でもそれは化粧によって着飾ったもので、“真実を伝える”音ではない。実際にヴィブラートのない“本来の”純粋な音は美しいと思いませんか?
私は学説的にどうだからとか、歴史的に、古楽奏法に即してという考え方に固執して言うのではなく「実際にやってみた。良かった。好きだ。だからやるんだ」という現実的な感覚が大事だと思っているから、自分のやっていることは古いやり方でなく、むしろ「きわめてモダンなアプローチだ」と言わせて欲しいね(笑)。古いとか新しいとかいう議論を超えて「いい音楽かどうか」が問われる時代だと思う。
なかなか茶目っ気たっぷりの楽しいインタビューでした。(2002-12-20)
マーラー体験2001
行ってきました。言うまでもなく、素晴らしい体験でした。レポートを掲載します。(2001-10-09)
























